2024年度運営指導対策(2)

2024.08.07

【第二回】指導と監査の違いと運営指導対策

1. 監査マニュアルが発出された

4月5日付けで、厚生労働省より「「介護保険施設等に対する監査マニュアル」について(通知)」が発出されました。これは、自治体が監査を実施するときの、行政側が活用するマニュアルです。2022年度より、従来の実地指導の名称が「運営指導」と変更されました。これは、オンライン指導が可能となり、必ずしも実地だけで行われるものではないためです。この時点で、厚生労働省から各自治体に向けて、介護保健施設等指導指針と監査指針、介護保健施設等運営指導マニュアルが改定されています。しかし、運営指導マニュアルがあっても、監査マニュアルが出されたのは今回が初めてです。

2. 指導と監査の違い

よく運営指導のことを「来月、監査がある」「監査は○年前に入った」など、運営指導と監査を混同されて捉えている方がいます。運営指導と監査は全く違います。運営指導は、その名の通りの指導が目的です。監査は、運営指導や苦情・告発などから得た情報が重大な指定基準の違反である疑いが強い場合に行われます。介護保険法の上で「立ち入り」の権限が役所に認められているため、超過定員の場合など、違法の実態を確実に把握する必要がある時は立入検査が行われます。監査の結果として違反が確定した場合に行政処分が行われます。

3. 行政処分の種類

行政処分の種類を見てみましょう。

一番軽度な「報告等」は、介護事業者に一定程度の改善の必要がある場合に、介護サービス事業者から文書による改善報告を求めます。

「改善勧告」は、運営指導などの結果として指定基準違反の事実が判明した場合に、改善勧告の対象となった指定基準違反の項目を明示して、適切かつ妥当な期限を設けて改善を求めます。

「改善命令」は、改善勧告を行っても指定基準違反の是正されない場合に、期間を定めて行います。

「指定の効力の全部又は一部停止」は、一般的に「業務停止処分」と言われています。

行政処分で最も重たい「指定の取消し」は、基本的には改善命令や指定の効力の停止の措置を取っても是正されない場合や、改善の余地の無い著しい不正があった場合で引き続き指定を行うことが不適切と判断された場合に行われます。

4. 運営指導の目的と対策

警察署、税務署などは同じ「署」の漢字を使います。この漢字を用いる部署は取り締まりを行います。運営指導は、県庁や市役所が行いますので、この「署」の漢字は使いません。運営指導は取り締まりでは無く、その名の通りに「指導」です。では、その目的は何かと言うと、事業者が法令を理解して、法令を遵守した事業運営を行っているかを、事業所に直接に訪問して確認し、誤っていた場合は指導することが目的です。仮に運営指導において介護報酬の算定に誤りがあった場合、事業者は過誤申請を出して誤りを是正することが求められます。これは役所から返還が求められたのではなく、あくまでも事業所からの自主返還となります。これが取り締まりである監査であった場合は、役所からの返還請求が行われ、かつ、罰金が40%ほど上乗せされます。これを見ても、運営指導は取り締まりではなく、指導である事がわかります。

そのために運営指導対策は、法令を理解して、法令を遵守することに尽きます。すべての介護事業者は許認可の時に、法令を遵守することの誓約書を提出しています。法令を理解することは介護事業を運営する上での義務なのです。

小濱 道博氏

小濱介護経営事務所 代表
株式会社ベストワン 取締役
一般社団法人医療介護経営研究会(C-SR) 専務理事
C-MAS 介護事業経営研究会 最高顧問

日本全国でBCP、LIFE、実地指導対策などの介護経営コンサルティングを手がける。
介護事業経営セミナーの講師実績は、北海道から沖縄まで全国で年間250件以上。全国の介護保険課、各協会、社会福祉協議会、介護労働安定センター、一般企業等の主催講演会での講師実績は多数。
介護経営の支援実績は全国に多数。