2024年度運営指導対策(3)

2024.08.21

【第三回】令和3年度介護報酬改定の再確認 ⑴

1. 令和6年度運営指導は前年分が中心に確認される。

毎年6月から、新年度の運営指導が本格化します。令和6年度介護報酬改定は、過去最大規模の改定となりました。それは、変更項目が過去最大という意味でもあります。人員基準、運営基準はもとより、既存の加算の多くが、算定要件の変更がありました。今年3月でコロナ禍特例も廃止となっています。令和6年度の運営指導は、前年分を中心に確認されますので、令和3年度介護報酬改定の再確認を行いましょう。特に、前回改定の令和3年はコロナ禍真っ只中であったこともあり、情報が不十分な事業所も多いようです。

①ハラスメント対策の義務化

介護人材の確保においては、介護職員が安心して働くことができるように、ハラスメント対策などの職場環境・労働環境改善を図ることが必要です。令和3年度介護報酬改定においては、パワーハラスメント及びセクシャルハラスメントなどのハラスメント対策が義務化されました。全ての介護サービス事業者は、男女雇用機会均等法等におけるハラスメント対策に関する事業者の責務を踏まえて、ハラスメント対策としての措置を講しなければなりません。また、カスタマーハラスメントについても、その防止のための方針の明確化等の必要な措置を取ることが大切とされました。そのため、就業規則などでハラスメントへの厳重対処する旨の方針を明確にするとともに、職員に対してハラスメント研修を定期的に実施する必要があります。また、法人内に相談窓口を設置して、担当者を決めておくことも必要です。相談を受けた場合の記録として、相談シートを準備しましょう。

②感染症対策

全サービスを対象に感染症の発生及びまん延等に関する取組として、感染対策委員会の開催、感染症の予防及びまん延の防止のための指針、研修と訓練が義務化されました。3年間の経過措置が設けられていましたが、令和6年度から運営指導において実施状況が確認されます。未実施の場合は、運営基準違反の指導を受けることになります。

●感染対策委員会の開催

感染対策委員会は、おおむね6月に1回以上、定期的に開催するともに、感染症が流行する時期等に必要に応じて随時開催する必要があります。外部を含めて感染対策の知識を有する者を含み、幅広い職種により構成することが望ましとされました。構成メンバーの責任及び役割分担を記した委員会名簿を作成して、専任の感染対策担当者を決めておく必要があります。

●感染症の予防及びまん延の防止のための指針

指針には、平常時の対策及び発生時の対応を規定しましょう。平常時の対策は、事業所内の衛生管理(環境の整備等)、ケアにかかる感染対策(手洗い、標準的な予防策)等、発生時の対応としては、発生状況の把握、感染拡大の防止、医療機関や保健所、市町村における事業所関係課等の関係機関との連携、行政等への報告等を記載します。また、発生時における事業所内の連絡体制や関係機関への連絡体制を整備して明記しておくことが必要です。

●感染対策の研修と訓練の実施

研修の内容は、感染対策の基礎的な内容等の知識、指針に基づいた衛生管理の徹底や衛生的なケアの励行を行う内容とします。年1回以上、定期的に開催するとともに、新規採用時には感染対策研修を実施することが望ましいとされています。終了後は研修記録を作成します。また、実際に感染症が発生した場合を想定して、発生時の対応についての訓練(シミュレーション)を年1回以上、定期的に行うことが必要です。訓練は、感染症発生時において迅速に行動できるように、発生時の対応を定めた指針と研修内容に基づいて、事業所内の役割分担の確認や、感染対策をした上でのケアの演習などを実施します。訓練の実施は、机上のシミュレーションを含めて、実施手法は問いません。シミュレーションと実地訓練を組み合わせなが実施することが適切です。また、業務継続計画(BCP)における研修、訓練と合わせて実施することが可能です。

小濱 道博氏

小濱介護経営事務所 代表
株式会社ベストワン 取締役
一般社団法人医療介護経営研究会(C-SR) 専務理事
C-MAS 介護事業経営研究会 最高顧問

日本全国でBCP、LIFE、実地指導対策などの介護経営コンサルティングを手がける。
介護事業経営セミナーの講師実績は、北海道から沖縄まで全国で年間250件以上。全国の介護保険課、各協会、社会福祉協議会、介護労働安定センター、一般企業等の主催講演会での講師実績は多数。
介護経営の支援実績は全国に多数。