財務情報の提供の義務化の詳細が判明しました
令和6年度介護保険法に於いて、介護サービス事業者経営情報(以下、経営情報)を、所轄する都道府県知事に報告することが義務化されました(第115条の44の2 第二項)。そして、提出をしない、又は虚偽の報告を行った場合は、期間を定めて報告もしくは内容を是正することを命ずることが出来るとされています(同、第六項)。その命令に従わない時は、指定の取消もしくは業務停止の処分が出来るとされました(同、第八項)。
経営情報の提出方法は、介護サービス事業者の経営情報の収集及びデータベースが整備されます。ここに手入力するか、会計ソフトでCSVファイルを作成して、電子データとして送信する形になります。
この公表については、介護事業者が提出した個別の事業所情報を公表するのではなく、属性等に応じてグルーピングした分析結果を公表するとされています。このため、一部で懸念されている、自事業所の経営状態や役員報酬の金額などが利用者・家族に把握されてしまうという懸念は杞憂です。
令和6年度の提出対象は、令和5年度決算分です。令和5年4月から令和6年3月の間に決算期を迎えたデータを、令和7年1月から3月の間で報告しなければなりません。また、すでに提出が義務化されている社会福祉法人についても、改めてこちらのシステムでの報告が必要です。
原則として、全ての介護サービス事業者が提出の対象となります。ただし、過去1年間で提供を行った介護サービスの対価として支払いを受けた金額が100万円以下のもの、及び、災害その他都道府県知事に対し報告を行うことが出来ないことにつき正当な理由があるものは対象外とされています。この場合、いわゆる、みなし指定の事業所も対象となりますが、居宅療養管理指導や介護予防支援は対象外となっています。
経営情報の提出に当たっては、GビズID(gBizIDプライム)のアカウント取得が必要となります。アカウントの作成方法、運用方法等については、令和6年秋頃の運用マニュアルの発出と併せて連絡されます。すでに取得済みの場合は、再取得の必要はありません。
〇報告に向けてのスケジュールは以下の通りです。
- 令和6年7月頃 報告内容・方法等に係る通知等の発出
- 令和6年秋頃 報告システムにおける操作方法のマニュアル・動画の公表
- 令和7年1月以降 報告システムの運用の開始、令和6年度分報告の開始
- 令和7年3月末 令和6年度分(初年度分)報告〆切
ここで問題となるのは、介護サービス事業者の7割が小規模事業所であることです。会計事務所に使い方も、領収書を丸投げすることでの単なる記帳代行を依頼しているケースも多いでしょう。事務員がいない法人も多く存在します。経理事務は、代表者自らか家族が行っているような経営者の多くは、財務諸表の読み方が分からないのが現実です。
会計事務所も、介護保険制度に精通していることは希で、税金の申告のみと言う顧問形態が大部分です。会計の区分についての知識も皆無である場合が多いのです。これは、会計事務所が行っている業務が税金の申告であり、その為の税務会計が中心でことから当然でもあります。しかし、今回の財務諸表の提出の義務化は、その利用目的を大きく変えるでしょう。税務申告と共に、財務諸表の提出のための資料作成を依頼する事になるからです。単に領収書を整理して、決算書を作るだけでは足りなくなりました。今後は、介護事業に精通している会計事務所を選ぶべきです。今回の義務化を機に、その点をしっかりと見極める必要があります。また、今年度の提出時期の令和7年1月から3月は、会計事務所にとって確定申告の繁忙期を重なるため、急な依頼には対応できないことが想定されます。早い時期から、打ち合わせが必要です。
第109回社会保障審議会介護保険部会の資料
小濱 道博氏
小濱介護経営事務所 代表
株式会社ベストワン 取締役
一般社団法人医療介護経営研究会(C-SR) 専務理事
C-MAS
介護事業経営研究会 最高顧問
日本全国でBCP、LIFE、実地指導対策などの介護経営コンサルティングを手がける。
介護事業経営セミナーの講師実績は、北海道から沖縄まで全国で年間250件以上。全国の介護保険課、各協会、社会福祉協議会、介護労働安定センター、一般企業等の主催講演会での講師実績は多数。
介護経営の支援実績は全国に多数。