再注目される保険外サービス

2024.09.11

介護保険外サービスが大きく注目されたのは、2018年の介護保険制度改正です。厚生労働省から「介護保険サービスと保険外サービスを組み合わせて提供する場合の取扱いについて」通知が2018年9月28日付けで発出されました。これによって、介護保険外サービスへの規制緩和措置が明確になっています。また、当時、東京都豊島区において、混合介護のモデル事業が実施され、通所サービスの保険外サービスの一環として、送迎費用を取っての移動支援や同行援助を行うモデル事業の実施が検討されました。当時は、保険外サービスが一層の拡大されることが期待されました。しかし、介護業界は慢性的な人材不足であり、介護保険外サービスにも人材が必要と言うこともあって、尻つぼみで現在に至った経緯があります。

2024年6月21日、骨太の方針2024が閣議決定されました。この中で、「深刻化するビジネスケアラーへの対応も念頭に、介護保険外サービスの利用促進のため、自治体における柔軟な運用、適切なサービス選択や信頼性向上に向けた環境整備を図る。」と記されたことから、再び、介護保険外サービスが注目される事となったのです。

ヤングケアラー問題については、ケアマネジャーの法定研修カリキュラムに盛り込まれ、特定事業所加算の算定要件に位置づけられてため、関心が高まっています。ビジネスケアラーとは、働きながら親などの介護をする人を言います。現在の高齢化社会の中で増え続けていて、経済産業省は、2030年には家族介護者のうち4割、318万人がビジネスケアラーになると予測しています。その離職や労働生産性の低下に伴う経済損失額は9兆円に上るとされています。仕事と介護を両立するための手段として介護保険外サービスに脚光が浴びているのです。

厚労省は、2018年の通知で、以下①~④については、一定のルールを遵守する場合に介護保険外サービスとして提供可能としました。2018年に解禁された保険外サービスは

  • ① 事業所内において、理美容に加え、巡回健診、予防接種を行うこと。
  • ② 利用者個人の希望により事業所から外出する際に、保険外サービスとして個別に同行支援を行うこと。
  • ③ 物販、移動販売、レンタルサービス
  • ④ 買い物等代行サービス。

の4点でした。

そして、訪問介護サービスについては、大きな緩和措置が無く、現在に至っています。今回の骨太の方針2024によって、訪問介護サービスについての規制緩和が期待されています。

介護保険外サービスの大きな問題は、全額が自己負担となる事です。しかし、介護保険サービスでは、緊急の対応が出来ず、事前にケアプランへの位置づけが必要など融通が利かないことが欠点であります。仕事をする上で、急な出張や夜の接待などで家に居ることが出来ない時間などに、保険外の訪問介護サービスがあると便利です。しかし、前述したように、費用負担も馬鹿になりません。使いすぎると、生活に支障を来します。今後は、国が主導しての管理機能も必要です。今回の骨太の方針2024での位置づけから、どのような施策が厚生労働省から示されるかに注目したいと思います。

小濱 道博氏

小濱介護経営事務所 代表
株式会社ベストワン 取締役
一般社団法人医療介護経営研究会(C-SR) 専務理事
C-MAS 介護事業経営研究会 最高顧問

日本全国でBCP、LIFE、実地指導対策などの介護経営コンサルティングを手がける。
介護事業経営セミナーの講師実績は、北海道から沖縄まで全国で年間250件以上。全国の介護保険課、各協会、社会福祉協議会、介護労働安定センター、一般企業等の主催講演会での講師実績は多数。
介護経営の支援実績は全国に多数。