今、注目されている共生型サービス

2024.09.18

2018年改定で創設された共生型サービスは、なかなか普及が進んでいません。その理由の多くが、職員が不安に思う事であったり、利用者が障害者と同じスペースにいることを好まないだろうという先入観です。実際に、複数のデイサービスで共生型生活介護を併設している事業所は、業績は尻上がりで好調です。あるデイサービスは短時間リハビリデイサービスで、障害者にも機能訓練を提供しています。夜によく眠れる。気持ちが落ち着くなど、概ね好評です。体調も改善されており、就労支援に移行した利用者もいます。親が要介護認定者、子供が障害者の親子は、一緒にデイサービスに通っています。

介護事業で共生型を運営する理由の一つが稼働率のアップです。共生型サービスの許認可では、障害福祉独特の資格であるサービス管理責任者の配置等が免除されます。現在のデイサービスの人員配置で、障害福祉のデイサービスである生活介護の許認可を受けることが出来ます。その代わり、基準該当サービスと同じ報酬体系となりますが、予防の利用者を受け入れたと考えれば許容範囲です。一日に一人でも二人でも障害者を受け入れることで、確実に稼働率がアップします。一般的に障害福祉サービスのニーズは、レスパイトです。しかし、リハビリテーションのニーズは潜在的に多く存在します。それが今、大きく注目されています。

障害福祉サービスにおける自立訓練は、利用者数及び事業所数共に低位のまま推移しています。事業所が1か所もない都道府県もあります。すでに介護保険のデイサービスや小規模多機能型において、共生型自立訓練(機能訓練)が可能となっていますが、入浴・排せつ・食事等の介護の提供が中心となるこれらのサービスでは障害者の身体機能・生活能力の維持・向上等に関する支援ニーズに十分応えられていません。そこで、令和六年度障害福祉サービス報酬改定白羽の矢が立ったのは、これまで共生型が設けられていない通所リハビリテーションでした。これを受けて、介護給付費分科会においても、共生型通所リハビリテーション創設が示されました。問題は、どれほどの事業所が共生型自立訓練に興味を示すかです。障害者の身体機能・生活能力の維持・向上等に関する支援ニーズは確実に存在します。今後は、障害者へのリハビリテーションの提供も大きな利用目的となります。これまでの障害福祉サービスにおいては、機能訓練による社会参加、就労支援という観点が甘かったと感じます。共生型自立訓練がその起爆剤になるかも知れないのです。

問題は、障害者に対してリハビリテーションを如何に提供するかです。リハビリにおいて、転倒リスクは大きな課題です。この点は、寝ながらリハビリを行うプログラムを導入することで解決出来ます。その副次的な効果として、介護サービスでも中重度者の利用者が増えて、客単価が高くなります。ポイントは、リハビリによる改善の見える化です。そして、利用者のアセスメントと改善のためのプログラムの導入です。この点は、評価者によるバラツキが問題となります。評価の均一化と効率化のためにICTシステムの導入が適しています。ICT化は職員の負担軽減と本来業務に集中させるためにも重要なポイントです。共生型に限らず、デイサービスにも“結果が見える評価システム” は必須です。共生型サービスを提供する事業所は、まだまだ少ない状況が続いています。しかし、今後の時流は、ニーズのある共生型が大きな潮流となっていくでしょう。そして、競争がない今から参入することで、地域の一番店になる事が可能です。このビッグチャンスを逃す手はありません。

小濱 道博氏

小濱介護経営事務所 代表
株式会社ベストワン 取締役
一般社団法人医療介護経営研究会(C-SR) 専務理事
C-MAS 介護事業経営研究会 最高顧問

日本全国でBCP、LIFE、実地指導対策などの介護経営コンサルティングを手がける。
介護事業経営セミナーの講師実績は、北海道から沖縄まで全国で年間250件以上。全国の介護保険課、各協会、社会福祉協議会、介護労働安定センター、一般企業等の主催講演会での講師実績は多数。
介護経営の支援実績は全国に多数。