BCP減算への対応とシミュレーション訓練の方法
令和3年度介護報酬改定に於いて、全ての介護サービス事業者を対象に業務継続に向けた取組の強化が義務化されました。業務継続に向けた計画等の策定(BCP)、研修の実施、訓練の実施等が必要です。研修の実施、訓練の実施において、定期的(在宅サービスは年1回以上、施設サービスは年2回以上)な研修と訓練を開催して記録しなければなりません。
令和6年度介護報酬改定で設けられたBCP減算は、特例の適用を受ける場合は令和7年4月からです。しかし、減算の有無は介護報酬の算定要件に過ぎません。令和6年4月からの義務化は変わっていないために、今後の運営指導で未策定の場合、減算にはなりませんが運営基準違反で指導対象となるのです。それは、研修・訓練の未実施も同様です。
研修の実施、訓練(シミュレーション)の実施については、定期的(在宅サービスは年1回以上、施設サービスは年2回以上)な研修を開催して記録しなければならないとされました。訓練(シミュレーション)は、感染症や災害が発生した場合に実践するケアの演習等を定期的(在宅サービスは年1回以上、施設サービスは年2回以上)に実施します。
感染症BCPにおいては、5類に変わった結果、濃厚接触者も無くなったので、どうすれば良いかとの相談も増えています。厚生労働省のひな型は、コロナ禍を念頭に置いているため、5類移行後の対応に苦慮しているようです。基本的に感染症対策は共通の部分が多いため特に変更する必要はありません。作成時点では、コロナを前提に作成していますが、感染症はコロナだけではありません。近い将来、新たな新種のウイルスの発生もあるでしょう。BCPは最悪の状況で職員が出勤出来なくなることを想定した計画です。よって、コロナ禍初年度の状況を念頭に置いた感染症BCPのままで良いのです。新型ウイルスは10年サイクルで発生すると言われています。10年前がSARS、20年前が新型インフルエンザと言った具合です。また10年もすると、新たなウイルスが現れるかも知れないのです。昨年末は季節外れのインフルエンザが大流行しました。ノロウイルスのクラスターも報告されています。新たなウイルスが出現した場合、濃厚接触者の定義が復活します。BCPは最悪を想定して作成するものです。よって、コロナ禍が発生した1年目を想定して作成しておけば良いと言うことです。
BCPの完成後は、研修訓練の方法が気になり出すでしょう。例えば、感染症BCPの訓練方法は、机上訓練(シミュレーション)をお勧めします。感染症の訓練であれば、「新型コロナウイルス感染症感染者発生シミュレーション~机上訓練シナリオ~」を活用しましょう。まず、参加者を5―6人のグループに分けます。そして、同じ設問を5―10分程度のディスカッションを行って頂きます。時間になると、グループ毎に発表します。このように、シミュレーション訓練は、グループワークの方式を取って行います。全グループの発表終了後、机上訓練シナリオにある「解説」を読み合わせて共有します。この時、グループ発表の内容に正解はないので一切の批評はしません。この方法で、職員も盛り上がり、1時間があっという間に過ぎていきます。これによって、新たな考えや対処法の気づきも生まれて、感染症BCPの見直し、バージョンアップに繋がります。自然災害も同様の方法で、課題を設定してグループワークを行って進めましょう。例えば、訪問サービスの場合は、居宅を訪問中に大きな地震に被災して、利用者が怪我をした場合の対処法や、デイサービスの送迎途中での被災における対処法を検討します。介護施設であれば、停電でエレベータが止まった場合の、食料や水の提供方法や、ナースコールの代替案などを検討します。討論後は、現在のBCPの記載事項を確認して、見直しに繋げていきます。
出典:第239回社会保障審議会介護給付費分科会
小濱 道博氏
小濱介護経営事務所 代表
株式会社ベストワン 取締役
一般社団法人医療介護経営研究会(C-SR) 専務理事
C-MAS
介護事業経営研究会 最高顧問
日本全国でBCP、LIFE、実地指導対策などの介護経営コンサルティングを手がける。
介護事業経営セミナーの講師実績は、北海道から沖縄まで全国で年間250件以上。全国の介護保険課、各協会、社会福祉協議会、介護労働安定センター、一般企業等の主催講演会での講師実績は多数。
介護経営の支援実績は全国に多数。