医療・介護DXの推進が始まる
7月8日の介護保険部会において、介護情報基盤が論点に上がりました。そのスタート時期を、2026年4月の開始を目標とすることが示されました。今後は、介護保険者証のペーパーレス化、マイナンバーカードとの一体化を含めて、紙の排除が加速していきます。ICT化は在宅サービスを含めて、もう待った無しです。すでに時間は、新たな時流に移ろうとしている。
令和5年5月19日に公布された「全世代対応型の持続可能な社会保障制度を構築するための健康保険法等の一部を改正する法律(令和5年法律第31号)」において、
- ① 介護情報基盤の整備を地域支援事業として位置付けること。
- ② 市町村は、この事業を、医療保険者等と共同して国保連・支払基金に委託できること。
- ③ その施行期日は、公布後4年以内の政令で定める日とする。
ことが定められました。
その施行日については、市町村の標準準拠システムへの移行目標が令和7年度中とされていることを踏まえて、令和8年4月1日の施行を目指して準備を進めるとされています。
介護情報基盤は、国保中央会において新規開発されています。それは、介護報酬請求システム、ケアプランデータ連係システムやLIFEなどの既存システムも活用した全体構成として検討が進められているのです。それによって、介護情報基盤の情報を、利用者、自治体、介護事業所、医療機関がそれぞれ連携・閲覧することが出来るようになります。
自治体は、ケアプラン情報、LIFE情報を閲覧・活用できます。また、介護保険証等情報、要介護認定情報、住宅改修費利用等情報については、介護情報基盤に登録することになります。主治医意見書も介護情報基盤経由で受領します。利用者においては、介護情報基盤に登録された自身の介護情報をマイナポータル経由で閲覧できます。介護事業者は、介護情報基盤に登録された介護情報を、介護保険資格確認等WEBサービスを経由して閲覧できます。また、ケアプラン情報やLIFE情報は介護情報基盤に登録されます。医療機関においては、本人同意の下に、介護情報等を適切に活用することで、利用者に提供する介護・医療サービスの質を向上させことが期待されています。これまで紙を使ってアナログにやりとりしていた情報を電子で共有できるようにすることで、業務の効率化(職員の負担軽減、情報共有の迅速化)を実現することが目的です。その成果として、事業所間及び多職種間の連携の強化、本人の状態に合った適切なケアの提供など、介護サービスの質の向上に繋がることも期待されています。
同じく21日に閣議決定されたデジタル社会の実現に向けた重点計画においては、マイナンバーカードを活用したデジタル化として、予防接種の接種券、母子保健(健診)の受診券、介護保険証として利用する取組について、2024年度より先行実施の対象自治体において順次事業を開始するとともに、全国的な運用を2026年度以降より順次開始する。として、介護保険者証を2026年にマイナンバーカードに一体化する方向が示されました。
また、医療DXの推進に関する工程表(令和5年6月2日 医療DX推進本部決定)においては、保健・医療・介護の情報を共有可能な「全国医療情報プラットフォーム」を構築する中で、介護情報については、2024年度からシステム開発を行った上で希望する自治体において先行実施して、2026年度から自治体システムの標準化の取組の状況を踏まえて全国実施をしていく。とされました。
このように、紙を排除するペーパーレス化が推進されて、医療介護DXによる情報共有化が進んでいくことになります。そのスタート時期は2026年の予定です。なかなか普及が進まない、ケアプランデータ連係システムも、このシステム統合化で大きく推進される可能性が出来ました。また、LIFEの共有によって、LIFEに取り組まない事業所や、リハビリの成果が出ない事業所の淘汰が進む懸念も出てきたといえます。
出典:第113回社会保障審議会介護保険部会の資料について
小濱 道博氏
小濱介護経営事務所 代表
株式会社ベストワン 取締役
一般社団法人医療介護経営研究会(C-SR) 専務理事
C-MAS
介護事業経営研究会 最高顧問
日本全国でBCP、LIFE、実地指導対策などの介護経営コンサルティングを手がける。
介護事業経営セミナーの講師実績は、北海道から沖縄まで全国で年間250件以上。全国の介護保険課、各協会、社会福祉協議会、介護労働安定センター、一般企業等の主催講演会での講師実績は多数。
介護経営の支援実績は全国に多数。