今年度から義務化の感染症対策と高齢者虐待防止措置
1. 感染症対策
令和3年度介護報酬改定に於いて、全サービスに感染症の発生及びまん延等に関する取組として、感染対策委員会の開催、感染症の予防及びまん延の防止のための指針、研修と訓練が義務化されました。そして3年間の経過措置が設けられていましたが、今年度は終了して、未実施の場合は、運営基準違反の指導を受けることになります。すべての事業者がやるべきことは以下の通りです。
①感染対策委員会の開催
感染対策委員会は、おおむね6月に1回以上の定期的開催して、感染症が流行する時期等には必要に応じて随時開催する必要があります。 外部を含めて感染対策の知識を有する者を含めて、幅広い職種により構成することが望ましいとされました。構成メンバーの責任及び役割分担を記した委員会名簿を作成して、専任の感染対策担当者を決めておく必要があります。
②感染症の予防及びまん延の防止のための指針
指針には、平常時の対策及び発生時の対応を規定します。平常時の対策は、事業所内の衛生管理(環境の整備等)、ケアにかかる感染対策(手洗い、標準的な予防策)等です。発生時の対応としては、発生状況の把握、感染拡大の防止、医療機関や保健所、市町村における事業所関係課等の関係機関との連携、行政等への報告等を記載します。また、発生時における事業所内の連絡体制や関係機関への連絡体制を整備して明記しておくことが必要です。
③感染対策の研修と訓練の実施
研修の内容は、感染対策の基礎的な内容等の知識、指針に基づいた衛生管理の徹底や衛生的なケアの励行を行う内容とします。年1回以上、定期的に開催するとともに、新規採用時には感染対策研修を実施することが望ましいとされています。終了後は研修記録を作成します。また、実際に感染症が発生した場合を想定して、発生時の対応についての訓練(シミュレーション)を年1回以上、定期的に行うことが必要です。訓練は、感染症発生時において迅速に行動できることが目的です。発生時の対応を定めた指針と研修内容に基づいて、事業所内の役割分担の確認や、感染対策をした上でのケアの演習などを実施します。訓練の実施は、机上のシミュレーションを含めて、実施手法は問われません。業務継続計画(BCP)における研修、訓練と合わせて実施することも可能です。
2. 高齢者虐待防止措置
感染対策と同じく、令和3年度介護報酬改定において全サービスに義務化されました。全ての介護サービス事業者を対象として、虐待の発生又はその再発を防止するための委員会の開催、指針の整備、研修の実施、専任の担当者を定めることが義務づけられました。令和6年3月までは経過措置期間でしたが、令和6年4月より義務化されて、未実施の場合は運営基準違反として指導対象となります。同時に、減算も創設されました。特例は福祉用具貸与のみのため、未実施の場合は、この4月から1%の減算が適用されています。
①虐待防止検討委員会
虐待防止検討委員会は、虐待等の発生の防止・早期発見に加えて、虐待等が発生した場合はその再発を確実に防止するための対策を検討する委員会です。管理者を含む幅広い職種で構成します。役割分担を明記した委員会名簿を作成して、定期的に開催することが必要です。また、虐待防止の専門家を委員として積極的に活用することが望ましいとされました。
②指針の作成と研修の実施
虐待の防止のための指針を作成します。研修内容は、虐待等の防止に関する基礎的内容等の適切な知識、指針に基づいて虐待の防止の徹底を行う内容とします。 職員教育を組織的に徹底させていくために、指針に基づいた研修プログラムを作成して年1回以上の定期的な研修を実施します。また、研修記録は保存します。専任の担当者を置くことが必要で、虐待防止検討委員会の責任者と同一の従業者が務めることが望ましいとされています。
出典:厚生労働省 令和6年度介護報酬改定について
小濱 道博氏
小濱介護経営事務所 代表
株式会社ベストワン 取締役
一般社団法人医療介護経営研究会(C-SR) 専務理事
C-MAS
介護事業経営研究会 最高顧問
日本全国でBCP、LIFE、実地指導対策などの介護経営コンサルティングを手がける。
介護事業経営セミナーの講師実績は、北海道から沖縄まで全国で年間250件以上。全国の介護保険課、各協会、社会福祉協議会、介護労働安定センター、一般企業等の主催講演会での講師実績は多数。
介護経営の支援実績は全国に多数。