生産性向上の導入の進め方【第一回】生産性向上の意味
生産性向上という言葉だけ聞くと難しそうなイメージがあります。それは、ICT化や業務改善、効率化を進めることを意味します。さらに、生産性向上が来年度からの介護職員等処遇改善加算の算定要件となり、職場環境等要件に大きく盛り込まれます。もう、生産性向上から避けては通れないという状況になっています。ICT化というと、介護ロボット、見守りセンサーとか、とてもお金がかかるようなイメージが強いようです。今回は、ICT化とは何か、生産性向上とは何かという話を進めていきたいと思います。
介護現場は、アナログ思考の職場と言っても過言ではありません。大量の紙で埋もれています。FAXもしかりです。今の時代は、FAXは多くの企業で使われていません。FAXが業務の中心にあるのは介護業界と役所ぐらいです。この10月から、郵便代金が値上げになりました。84円だったものが110円です。郵便は、経費の無駄使いでしか無くなって来ました。計画書、記録、記事録、日報、いろいろな業務が紙、紙、紙で成り立っています。この紙の書類がどんどん膨れ上がっていって、どこに保管するのかという問題もあれば、どこに置いたのかわからなくなるという問題が起こってくる。これは、非常に無駄です。さらに、管理や記録のシステムはコンピューターに移っていますので、紙からパソコンに手入力する。この作業に、2度手間、3度手間が掛かっています。非常に無駄です。このようなアナログ的な仕事が、まだまだ介護業界には多いわけです。例えば、あの書類出してください。とお願いすると、ゴソゴソ、ガサガソとあっちこっちを探して、5分、10分掛かって、有りましたと出されてくる。これは、よくある話です。書類を管理している本人がその状態です。担当者が変わったら、前任の担当者が書類をどこに置いたかは、全くわからない状態になってしまいます。さらに、調べたり、剥がしたり、作り直したり、何重もの手間が横行しているわけです。
そして今、介護業界はある意味で飽和状態です。例えばデイサービスは、地域密着型を含めると4万3千事業所があります。この数字は、コンビニとほぼ同じぐらいです。セブンイレブン、ファミリーマート、ローソンの三大コンビニの店舗数とほぼ同じくらいのデイサービスがあるわけです。競争が非常に厳しい業界と言えます。だからといって、良いサービスを提供しているからと言って値上げできません。介護報酬は、国が定めているからです。そのため、競合する事業者と、価格では勝負出来ません。では、どうするかと言うと、サービスの質で勝負することになります。他の事業所より、良いサービスを提供していることが、利用者の獲得につながります。しかし、介護現場は忙しすぎます。目の前のことで精一杯と状況が続いています。そこで、ICT化、業務改善に、しっかりと取り組んで、職員の空き時間を作ってあげる。空き時間を今まで以上に利用者に触れる時間に充てることで、更なる介護サービスの質の向上につなげていく。これを意識を持って進めていかないと、他の事業所との勝負に負けてしまいます。また、職員のモチベーションも上がりません。忙しい、忙しいという状況が続くと、退職に繋がります。そして、職員の定着率が、どんどん下がっていくことになります。これは、悪循環の何者でもありません。これを如何に改善するかが、大きなテーマになっています。
小濱 道博氏
小濱介護経営事務所 代表
株式会社ベストワン 取締役
一般社団法人医療介護経営研究会(C-SR) 専務理事
C-MAS
介護事業経営研究会 最高顧問
日本全国でBCP、LIFE、実地指導対策などの介護経営コンサルティングを手がける。
介護事業経営セミナーの講師実績は、北海道から沖縄まで全国で年間250件以上。全国の介護保険課、各協会、社会福祉協議会、介護労働安定センター、一般企業等の主催講演会での講師実績は多数。
介護経営の支援実績は全国に多数。