生産性向上の導入の進め方【第二回】ICT化が進まない理由と、職員の高齢化の原因
介護現場では、ICT化が出来ない理由が蔓延しています。やれ、パソコンが苦手だ、タブレットが苦手だという声は、ベテラン職員を中心に顕著です。自分たちの施設、事業所は高齢化が進んでいて、コンピューターとかの導入は難しいという声は本当に多いです。さらに、よく聞く言葉があります。それは、私は紙の方が安心するんです。という理由です。パソコンよりも紙の方が安心するんです。パソコンに入れたデータが消えたらどうするんですか?元に戻せませんよ。このように、出来ない理由が蔓延しているわけです。しかし、よくよく見ると、私はパソコンが苦手だ、タブレットが苦手だというベテラン職員が、空き時間にスマホでお孫さんとLINE交換していたりします。これは、出来ない理由を言っているだけです。仕事の手順が変わることを嫌い、進んでやろうとしないだけです。データが消えたら元に戻せないでしょうと言いますが、紙だって、汚れたり燃えたり、紛失したらお仕舞いです。
さらに、介護現場は高齢化が進んでいます。介護労働安定センターの令和4年度介護労働実態調査結果によると、介護労働者の平均年齢は、50.0歳です。なかなか、若い方の雇用が進んでいません。また、若い方が入っても、すぐ辞めてしまうという声も年々大きくなっています。これは、本当に大きな問題です。しかし、なぜ介護現場は若返りが進まないのでしょうか。今の時代は、高校とか大学では一人一台のパソコンとかタブレットを持つことが当たり前になっています。また、コロナ禍の3年弱の時間がありました。学校に登校できないときは、オンラインで授業を受けていたのです。iPadとかのタブレットを使って授業を受けていた時間があったのです。学生達は授業を受けるために、タブレットなどを普通に持って使っています。また、大学に合格すると、必ず指定のパソコンを買ってくださいと言われます。授業でパソコンを使うことは、当たり前の時代です。そのように、一人一台のパソコンやタブレットを持っていた若者達が、介護施設や事業所に就職すると、パソコンはあるけれど、部署に一台しかない。それも、機種が古いと、ソフトを立ち上げるのに20分以上掛かることも希ではありません。この待ち時間は無駄でしかありません。パソコンが1台しかない。この1台で請求もやっていれば、LIFEもやっていれば、計画書も記録も議事録も契約書も重要事項説明書も作っている。もう、職員の取り合いになります。この状態は、パソコンが入っているから業務の効率化ではありません。逆に、パソコンがあるから仕事が停滞しています。
介護施設にお伺いした時に、施設内に入るとスマホのアンテナが立たないことがあります。施設の多くは鉄筋コンクリートなどで出来ています。壁が電波を通さないのです。またWi-Fiがない施設もあります。これは、日常的にスマホを使っているものに取っては、非常にストレスです。特に若い方にとって、普通にスマホが日常生活に溶け込んでいる時代に、職場に行ったらスマホが使えない。Wi-Fi使えない。これは、ものすごいストレスです。そして、パソコン使えないから、ICT化が進まずに紙ベースの業務になっている。これは悪循環です。その結果、若い職員は、すぐ辞めてしまいます。
平均年齢が若い施設には共通点があります。それは、ICT化が進んでいることです。パソコンやタブレットも、職員に十分に行き渡っています。確実に、働きやすい職場です。若い人が来ない、来てもすぐに辞めてしまう。このキーワードに、ICT化があります。職場環境は、ベテラン職員に合わせてはダメなのです。これから若くて優秀なスタッフを確保したいのであれば、パソコンやタブレットの設置は充実しておかなくてはいけません。Wi-Fiもしっかりと通じるようにしておく。最低限、これをやらないと人は来ないし、やめてしまうということです。本当に重要なキーワードです。現場の若返りのキーワードはICT化にあるということです。
小濱 道博氏
小濱介護経営事務所 代表
株式会社ベストワン 取締役
一般社団法人医療介護経営研究会(C-SR) 専務理事
C-MAS
介護事業経営研究会 最高顧問
日本全国でBCP、LIFE、実地指導対策などの介護経営コンサルティングを手がける。
介護事業経営セミナーの講師実績は、北海道から沖縄まで全国で年間250件以上。全国の介護保険課、各協会、社会福祉協議会、介護労働安定センター、一般企業等の主催講演会での講師実績は多数。
介護経営の支援実績は全国に多数。