生産性向上の導入の進め方【第三回】介護ロボットや見守りセンサーだけがICT化では無い
ICT化というと、介護ロボットだ、見守りセンサーだ、インカムだ、介護記録ソフトだと言うことになるのが一般的なイメージです。しかし、見守りセンサーを全居室に配置すると、非常に値段も張ります。そのため、特に小規模事業者は、自分たちには無縁だと、関係ないと考えがちです。しかし、ICT化は、このような機械装置だけではありません。例えば、ICレコーダーがあります。ボイスレコーダー機能は、スマホなどにも付いています。今の時代は、このICレコーダーとAIがカップリングされている機種が増えて来ました。AIであるChatGPT-4oと連動する事で、ICレコーダーで録音したものが、スマホのアプリを通じて瞬時に文字起こししてくれます。今は、文字起こしの精度もかなり上がっています。さらには、文字を起こしするだけではありません。全体を要約して、議事録まで作ってくれます。これが、数分で出来上がってしまいます。そうすると、例えばケアマネージャーのサービス担当者会議とか介護施設職員のカンファレンスなどで活用することで圧倒的に業務が短縮できます。従来は、誰かが書記を担当して、紙の記事録メモをパソコンに入力して、保存用の議事録を作っています。あとで、パソコンで議事録を入力するときも、あれ?これ何て言ったかな?とか、話のポイントを忘れがちになります。そして、ポイントがずれてしまう。これが、ICレコーダーとAIをカップリングすることで、自動的にやってくれるのです。会議中の書記担当も不要です。しかし、文字おこしは100%完璧ではありません。しかし、精度がかなり向上していますので、若干、手直しすれば充分に使いものになります。非常に時間の短縮効果は高いと言えます。
また、電話のAI代行サービスなども増えて来ました。電話代行というと、委託業者のオペレーターが対応してくれて、後から電話でまとめて報告がくるなどのイメージかと思います。今の時代は、電話代行もAI化が進んでいます。Amazonなどのネットショップのカスタマーセンターに電話をすると、まず最初にAIが答えてくれるのをご存じでしょうか。例えば、商品のお問い合わせは、1番を、配送のお問い合わせは2番を押してくださいというアナウンスが流れます。そして1番を押して要件を話すと、AIが自動的に定例的な回答をしてくれます。そして、担当でなくては対応が出来ない要件については担当者に回すというシステムです。このように、一般的な回答はAIが自動的にやってしまいます。この仕組みを導入することで、職員は必要な電話だけ出れば良い状態が構築できます。営業絡みの電話は排除できます。不必要な営業目的の電話への対応は時間の無駄です。AIに、利用者家族の電話をも対応させるのは失礼だとの意見もありますが、時代が変わりつつある事を認識すべきです。
朝のバイタルチェックも非効率的なやり方が残っています。例えばデイサービスです。送迎車が到着しました。車から降りた利用者一人一人に看護職員が熱を測って、血圧を測って、結果を紙にメモをします。そのメモを後で集計表に転記して、それをまたパソコンに打ち直す。介護施設における朝の各居室の巡回も、熱を測って、血圧を測って、メモして、後でまとめるために、何重ものプロセスを辿る必要があり、無駄も多い作業です。この作業効率を改善する機器として、バイタル測定器があります。これは非接触型のオキシメーターで、利用者の額に近づけると自動的に熱とか血圧を測ってくれる機材です。測るだけではなくて、自動的に記録ソフトにデータが送られる機能も付いている機器もあります。記録ソフトに自動的に転記されますので、職員が行う作業は、利用者の額にこの測定器を近づけるだけです。非常に効率的ですが、まだ発展途上で価格帯はそれなりのようですが、実際に導入している介護施設に伺うと、かなりバイタルチェックの作業が楽になったとのことです。例えばこの3つの機器の1つを導入するだけでも、時間効率はかなり改善されるわけです。これらも、価格帯は安価ですがICT化の一つです。
小濱 道博氏
小濱介護経営事務所 代表
株式会社ベストワン 取締役
一般社団法人医療介護経営研究会(C-SR) 専務理事
C-MAS
介護事業経営研究会 最高顧問
日本全国でBCP、LIFE、実地指導対策などの介護経営コンサルティングを手がける。
介護事業経営セミナーの講師実績は、北海道から沖縄まで全国で年間250件以上。全国の介護保険課、各協会、社会福祉協議会、介護労働安定センター、一般企業等の主催講演会での講師実績は多数。
介護経営の支援実績は全国に多数。