生産性向上の導入の進め方【第四回】生産性向上の導入プロセス
ICT化のポイントは、日常的にやっている仕事の流れを確認して、二度手間三度手間となっている部分をピックアップすることから始まります。まずは、職員中心の業務改善委員会などを立ち上げます。その中で、これは、ちょっと無駄だよね。ここの待ち時間が長いよね。といった、業務プロセス上の課題、問題点などを可能な限り全てピックアップして行きます。そして、どうしたらこれを改善できるかを考えていきます。その改善方法は、例えばアナログ的な紙のファイリング方法の改善でもいいです。すべてをICTに結びつける必要はありません。ここのところは、会議の時間の無駄を省くためにICレコーダーとAIの組み合わせを導入しましょう。会議は、Zoomなどを使ってやりましょう。Zoom会議もICレコーダーとAIを通すと、Zoomの会話がすべて文字データに文字起こしてくれて、要約した記録を作ってくれます。これは、とても楽です。また電話も、受けたものは一旦AIに対応させることで、不要な営業電話などを全部弾きます。またバイタル測定機を使うことで、朝のバイタルチェックがとても簡素化出来ます。この点は前回のコラムで触れた通りです。
このように低価格で比較的容易に導入が出来るものから、見守りセンサーやインカムなど、補助金を活用しないと導入が難しいものまで、多岐に渡ります。それらの選択肢の中から、緊急性を要する課題や現場での受入が望まれているものから順に、毎期毎期、階段を登るように計画的に導入していきます。ICT化は特に、一気に導入する事は現場での混乱を招くだけです。なぜなら、現場は仕事のプロセスの変革を望まないからです。仕事のオペレーションを変える必要があるICTの導入は時間を掛けて慎重に導入を進めるべきです。
ICT化は難しい。導入したけれどもうまくいかない。そういう話を良く聞きます。なぜ、ICT化が上手く進まないのか。答えは簡単です。それは、ICT化を進めることが目的となってしまっているからです。上司から、介護ロボットを導入したから業務が楽になるので使って下さい。いずれも上からの一方通行です。ICT機器を入れました。介護ロボットを入れました。皆さん使ってください。ICTなので楽になりますよと。しかし、現場サイドでは、別に欲しいって言ってません。今のやり方で良いです。私は、紙の方が安心します。このギャップが失敗の原因です。例えば、介護記録ソフトを入れることで、タブレットだけで記録とパソコンへの入力のプロセスが完結します。しかし、現場サイドでは、紙の記録といった作業を今まで通り行っていて、後で纏めてタブレットに打ち込む事例も見受けられます。これは、逆に手間が増えています。ICT化を進めるためには、導入のための作業プロセスが必要です。一番最初にやるべきことは、トップの意思決定です。トップの方々が、これからは生産性向上に取り組んでいくんだと、自ら宣言いただくことが大切です。末端の職員の方にもその意思を伝える必要があります。また、現場に任せきりでは無く、定期的に進行状況を確認していくということがとても重要です。トップが率先して、生産性向上に取り組むという形がないと上手くいきません。その上で外部の専門家を活用することも良いと思います。まず最初に、トップがやるという意思をしっかりと固めていただくことが重要なのです。その上で、業務改善委員会や導入プロジェクトをスタートさせて、ボトムアップで現場の声も吸い上げて行きます。その上で、現在の業務フローを確認して、現場の課題分析を行います。その中で、無理な業務や無駄な業務、作業のムラを取り除く作業に入っていきます。その改善手段の選択肢の一つにICT機器の導入があるのです。このプロセスを経ずに、トップダウンだけでICTを導入すると、現場とのニーズにギャップが生じて、使われないという結果に繋がります。
小濱 道博氏
小濱介護経営事務所 代表
株式会社ベストワン 取締役
一般社団法人医療介護経営研究会(C-SR) 専務理事
C-MAS
介護事業経営研究会 最高顧問
日本全国でBCP、LIFE、実地指導対策などの介護経営コンサルティングを手がける。
介護事業経営セミナーの講師実績は、北海道から沖縄まで全国で年間250件以上。全国の介護保険課、各協会、社会福祉協議会、介護労働安定センター、一般企業等の主催講演会での講師実績は多数。
介護経営の支援実績は全国に多数。