生産性向上の導入の進め方 その2【第一回】厚生労働省が生産性向上を進める理由

2024.12.04

政府が、生産性向上を進める理由は、労働人口が年々減少していることにあります。高齢者の方々はどんどん定年退職でリタイヤされています。出生率が年々減少しているため、学校を卒業して就職する若年層が減り続けています。結果として、日本の労働人口は減る一方です。そうした中で介護の仕事は、人でないと出来ません。例えば、コンピューターがおむつ交換は出来ません。AIが入浴介助はできません。ICTだ、AIだと言っても出来ることは、間接的な事務作業だったり、人の動作の一部を補助する部分だけです。間接的な事務作業、例えば、記録を書く、勤務シフトを決める、介護計画を作る、もしくはカンファレンスの議事録を作る。こういった部分は、ICTの得意分野です。そういった業務を現場職員から外してあげる。そうすると、職員の方は間接的な仕事が無くなりますから、空き時間が出来ます。この空き時間で、利用者に接する時間が増えます。結果として、より良いサービスを提供することに繋がります。これが、事業所、施設全体のケアの質を高める結果になります。これが生産性向上の目的であり考え方です。

介護業界は、全体でICT化を進めていかないと、人手不足による介護サービスへの影響は解消出来ないということです。厚生労働省の試算では、2040年には272万人もの介護職が必要です。しかし、現状のままでは、69万人もの介護職が不足します。介護に携わる担い手の確保が重要です。人手がいないと、介護の質がどんどん落ちてきます。その対策としての生産性向上です。テクノロジー、ICTの活用で大きな効果が出ることは、これまでも検証されています。しかし、ICTを入れるだけでは何も出来ません。ICTを入れると共に、仕事の流れとか、書類の様式の工夫とか、オペレーション等を変えていく必要があります。現場のオペレーションとシステム設計の双方が歩み寄る必要があるわけです。結果として、ICTを導入することで職員の負担を減らしていきましょう。そして、ICT化による、業務改善、効率化によって生み出された空き時間を直接の介護ケアに充てましょう。職員が利用者に接する時間を増やすことが出来ます。結果として、介護の質の向上に繋がります。これが生産性向上の目的だと、厚生労働省は言っています。

そのために、厚生労働省は伴走支援という形で、フォローシステムを介護事業者に提供しています。しかし、ケアプランデータ連携システムでも、導入している事業所は5%程度と言われています。誰も使っていない、と言っても過言ではありません。今後、これのシステムをどう活用していくのかという問題が有ります。

そのような中で、令和7年度までに、全ての自治体の諸手続きは電子申請に移行します。現在は、許認可申請、変更届、加算の体制届、処分改善加算計画書と実績報告書などの手続きは、紙で印刷した書類を役所に郵送しています。行政関連の手続きは、基本的に紙ベースです。これらがすべて、電子申請に変わります。そうしますと、パソコンがないと仕事が出来ませんし、インターネットやWi-Fiが繋がっていないと仕事が進みません。インターネット、Wi-Fi、パソコンのいずれが欠けても業務に支障が出ます。仮に、パソコンが事業所の一台しかなかったら、仕事は渋滞してしまいます。ある程度、パソコンやインターネット設備に投資をしていかないと、これからは業務が回らないのです。

出典:厚生労働省 第9期介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数について

別紙1 第9期介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数について

小濱 道博氏

小濱介護経営事務所 代表
株式会社ベストワン 取締役
一般社団法人医療介護経営研究会(C-SR) 専務理事
C-MAS 介護事業経営研究会 最高顧問

日本全国でBCP、LIFE、実地指導対策などの介護経営コンサルティングを手がける。
介護事業経営セミナーの講師実績は、北海道から沖縄まで全国で年間250件以上。全国の介護保険課、各協会、社会福祉協議会、介護労働安定センター、一般企業等の主催講演会での講師実績は多数。
介護経営の支援実績は全国に多数。