生産性向上の導入の進め方 その2【第二回】生産性向上委員会の編成と5Sの実施

2024.12.11

ICT化に伴って、ペーパーレス化を進めて行くことが理想です。しかし、ペーパーレス化は、なかなか進まないのも現実です。ある程度、ICTが進んでいて、ペーパーレス化が行われている介護現場でも、まだまだ紙の書類での業務が残っています。例えば、介護施設における排泄表、食事表、入浴表などです。その原因は、導入されたシステムが、現場のオペレーションの全てを網羅していないことです。システムの流れが、現場の業務の流れに沿っていない部分があります。導入されたシステムは、現場の業務の流れの中で部分的に使われていることが多いのでは無いでしょうか。その隙間を埋めるために、紙の書類が必要となっています。

また紙の方が一覧性が高いので、現場のスタッフが見やすい、使いやすいという問題も見受けられます。介護現場は複数の業務が同時並行で動いているので、わざわざ紙で一覧性のある書類を作っています。それは、ICTの導入プロセスに現場の声が反映されず、上からの押し付けに近い形での導入であるのが原因です。ICT化を成功させるためには、現場の課題を分析して、要所要所に必要なICT機器やプログラムを入れる必要があります。そうしないと、ただICT入っているだけで、現場では、誰も使ってないという状況になります。

現場の声を聞き、かつ現場の課題を分析して問題点を把握するボトムアップでの作業プロセスは、非常に重要なります。具体的には、生産性向上のための委員会を編成します。その中で、介護現場の課題を見える化していきます。課題解決の対処法は、ICT化に限りません。アナログ的な現場の作業のシンプル化、効率化が効果的な改善策の場合もあります。課題解決を具体化するための行動計画を立てます。その作業は、ICTを導入したことでは完結しません。定期的に、ICTの導入状況と、介護現場の職員の適応状況を確認して、新たな課題や修正が必要なところは改善していきます。このプロセスを回し続けることが重要です。多くの場合、ICTを導入して完了となり、導入後の検証がされていないことが問題なのです。

生産性向上のために委員会を組織して、介護現場の課題や意見などをピックアップする事から始まり、その改善の方法を導き出す技法の一つとして、5S(ゴエス、ファイブエス)があります。5Sとは、整理・整頓・清掃・清潔・躾の頭文字を取ったものです。生産性向上委員会で、介護現場の問題点をピックアップして、リストアップします。このとき、この程度で良いだろうという、中途半端な妥協は厳禁です。底の底まで掘り下げて、現場の問題点を根こそぎ、ピックアップすることが重要です。その上で、問題点への対応をどうしていくのかを検討していきます。問題の解決策としては、ICT化や、現場に存在する紙を減らすというアナログ的な方法も検討が必要です。ICT機器を導入するまでは、アナログ的な対応で繋ぐという場合もあります。

5Sでは、まず現在の業務の流れ、作業プロセスを時系列で整理します。次に、そのプロセスの中で存在する紙の書類をすべてピックアップします。作業を進めるに従って、職員が独自に作っている書類が多かったり、重複する書類が多いことに驚くと思います。また、必要な書類が作成されていないということも判明します。一通り、作業プロセスと存在する紙の書類や業務を確認し終えたら、次は判別作業に移ります。必要な書類のみ残して、職員独自の書類や重複する書類は、すべて捨てていきます。あとで使うかも知れないという書類もあるでしょうが、それらも処分の対象にします。判断に迷う物や、使う頻度が極端に少ない書類は、別管理として通常の書類関係から外します。いらないものは全部捨てていく。ダブった書類も捨てていく。この仕分けを行って捨てる作業が、5Sの整理です。

小濱 道博氏

小濱介護経営事務所 代表
株式会社ベストワン 取締役
一般社団法人医療介護経営研究会(C-SR) 専務理事
C-MAS 介護事業経営研究会 最高顧問

日本全国でBCP、LIFE、実地指導対策などの介護経営コンサルティングを手がける。
介護事業経営セミナーの講師実績は、北海道から沖縄まで全国で年間250件以上。全国の介護保険課、各協会、社会福祉協議会、介護労働安定センター、一般企業等の主催講演会での講師実績は多数。
介護経営の支援実績は全国に多数。