生産性向上の導入の進め方 その2【第三回】介護現場の、無理、無駄、ムラ
業務オペレーションを整理するときの考え方に、3Mがあります。業務中に起こりえる、無理、無駄、ムラを、徹底的に排除します。
例えば、業務上の無理です。経験の少ない職員さんに、いきなり一人で夜勤を担当させる。体重80キロの男性利用者の移乗介助を女性一人でやらせる。これは、無理ですよね。
業務上の無駄では、利用者を自宅に送迎した後に、忘れ物に気づいてもう一回自宅に届ける。バイタルチェックでは、メモ、紙、一覧表、パソコンと、何度も転記している。
最後に、ムラです。担当者によって作っている書類や作業プロセスが異なっている。各担当者が、自己流でやっていて、他の担当者は、また別のやり方をとっている。曜日によって、職員の配置人数が違っていて、人数の少ない忙しい日は汗だくで業務をやっている。記録の付け方についての、説明も研修もない。ただ、やってください。結果として、職員によって、独自のやり方がまかり通っている。それらの現状が、全く把握されていない。
このように、介護現場では、無理、無駄、ムラが、日常的に蔓延しています。忙しいという免罪符がまかり通っていて、かといって、今さら仕事のやり方を変えるのもイヤだ。日々、仕事に流されている状況が続いているのが実態ではないでしょうか。これらを無くすことから、業務改善がスタートします。その上で、一目で分かるような作業プロセスを構築して、業務標準書を作成します。仕事上の間違い、ミスで仕事をやり直す、久しぶりにやる業務を思い出しながら進める、書類が机上や周辺に散乱していて、何がどこにあるか分からない、書類を探すだけで、時間が掛かる。これらは、すべてが仕事のバラツキであって、無駄な時間です。
前回、介護現場の課題を解決する時に使う技法の一つが5Sだと言いました。この技法を使って、仕事上のバラツキを減らしていきます。仕事のやり方をシンプルにして、バラツキを無くす事で時間的に余裕ができ、現場の生産性が向上します。この時に大事なのは、取り組んだ成果の見える化です。例えば、整頓前の書類などが散乱して、雑然とした机の上の写真を撮っておきます。次に、改善後の机の上の写真を撮ります。この2つの写真を並べることで、どのように変わったのか、誰でも理解できます。物品庫の雑然としてバラバラの物が置かれている様子と、整頓後の様子を写真で比べます。このように写真で、ビフォーアフターを示すことが大切です。また、進行状況をグラフ等を使って時系列に確認することで、誰が見ても改善が進んでいることが分かります。
5Sを実施する時の流れを解説して行きます。
まず、一番重要なのは、トップの強い意志決定です。トップが率先して生産性向上に取り組む意志を明確にして、その実現をコミットメントすることからスタートです。その上で、現場の職員を含めた生産性向上委員会を編成します。業務改善の方向性が固まってきたら、ICTの機材毎にプロジェクトチームを組むことも検討して行きます。ここで重要なことは、委員会やプロジェクトチームは、ICT等を導入して終了では無いと言うことです。その改善策が計画通りに効果が出ているかを、定期的に確認して検証するための組織であるということです。効果の検証の結果、問題が発覚した場合には、見直しや修正を加えていきます。すなわち、委員会やプロジェクトチームは、パーマネントな組織として存続し続けるという事です。
小濱 道博氏
小濱介護経営事務所 代表
株式会社ベストワン 取締役
一般社団法人医療介護経営研究会(C-SR) 専務理事
C-MAS
介護事業経営研究会 最高顧問
日本全国でBCP、LIFE、実地指導対策などの介護経営コンサルティングを手がける。
介護事業経営セミナーの講師実績は、北海道から沖縄まで全国で年間250件以上。全国の介護保険課、各協会、社会福祉協議会、介護労働安定センター、一般企業等の主催講演会での講師実績は多数。
介護経営の支援実績は全国に多数。