生産性向上の導入の進め方 その2【第四回】生産性向上委員会の運営プロセス
生産性向上委員会の最初のプロセスを見ていきます。最初に、介護現場の日常業務フローを、時間軸に沿って分割します。次に、各業務パートで使われている管理書類、機材、配置職員数などの現状を一覧表などに取りまとめていきます。その上で、各業務パートで生じている問題点、書類の重複状況、担当者の独自書類の有無、現場職員のインタビューを通した課題の確認を行っていきます。このとき重要なのは、担当者の判断で、この程度で良いという中途半端な妥協は厳禁ということです。根底にある課題を洗いざらい明確にするという気構えが必要です。私情を抜きにして、徹底的に現場の課題を引き出します。そのとき、3Mの考え方を前提に、介護現場の、無理、無駄、ムラを明らかにしていきます。そして、その原因を探ります。このパートは、いわゆる課題分析と言われるものですが、難しく考える必要はありません。
生産性向上を追求する委員会が、アナログ的なやり方で進めては本末転倒です。委員会のメンバーの負担を最小限にする方法を選択します。職員のインタビューは、対面ですと場所や時間に制限が出ます。移動時間や対面での時間調整を節約するために、ZOOMなどのテレビ電話システムを活用する。ChatworkやLINEWorks、サイボウズといったビジネス・チャットツールやグループワークを活用することも必要です。これらのシステムを使うことで、質問者と回答者が、相手の時間を気にせずに、チャットで意見募集やアンケートなどのやりとりが出来ます。会議やインタビューにおいては、ICレコーダーにAIによる文字起こし機能が付いた機材を使うことで、書記担当の配置や、議事録の作成が圧倒的に改善されます。
その上で、5Sを実行して、業務を改善します。手順としては、準備段階で、生産性向上委員会を作り、キックオフ大会を開催します。スローガンを作り、取り組む目標を明確にすることも大切です。第一に、整理として、必要なものと不必要なものを分類していきます。例えば、赤タグをつけることで分類して7、廃棄するものと、長期保管場所に移すものを仕分けします。一月ごとに見立てた場所を撮影して、ビフォーアフターの明確化を行います。これを職員に定期的に公開する事で、一目で進行状況と効果が見える化出来ます。そうすると、士気も上がります。整頓では、例えば、車椅子の置き場では、白いテープを床に貼って一台毎が一定間隔で置くことが出来るようにします。その上で、清掃・清潔・躾を実施して、習慣化していきます。5Sでは、この手順を踏むことで、業務改善を実現します。
紙媒体の5Sでは、
① 整理として、業務処理のプロセスを見える化して、この処理手順で、不要なプロセスは無いか、ダブってないかを検討する。プロセスを単純化して、業務のダブりを無くす。人によって独自に作成した書類様式を一本化する。
② 整頓として、ファイリングのルールを作る。この書類はこのファイルに閉じてください。ファイルの背表紙には、中身が誰でもわかるように明確に記載しておく。そうすることで、すぐに誰でも必要なもものを取り出せます。紙媒体は特に、書類の重複とか、必要なものだけを保管する等、業務フローをシンプルにします。ファイリングのルールを徹底して守らせることに尽きます。これだけでも、業務効率は、かなり改善されます。
小濱 道博氏
小濱介護経営事務所 代表
株式会社ベストワン 取締役
一般社団法人医療介護経営研究会(C-SR) 専務理事
C-MAS
介護事業経営研究会 最高顧問
日本全国でBCP、LIFE、実地指導対策などの介護経営コンサルティングを手がける。
介護事業経営セミナーの講師実績は、北海道から沖縄まで全国で年間250件以上。全国の介護保険課、各協会、社会福祉協議会、介護労働安定センター、一般企業等の主催講演会での講師実績は多数。
介護経営の支援実績は全国に多数。