2024年介護報酬改定はプラス改定?マイナス改定?

2023.02.24

令和5年2月1日に、令和4年度介護事業経営概況調査の結果が公表され、介護事業の全サービスの収支差率(介護事業の収入と支出の差額の収入に占める割合。利益率。)は3.0%と前年調査対比で0.9%の悪化となりました。

次期(令和6年)介護報酬改定の改定率の決定に最も大きな参考データとなるのは、令和5年度介護事業経営実態調査であり、令和5年5月に実施され10月に公表される予定です。令和4年4月~令和5年3月までの介護事業の経営調査であり、物価高騰の影響も加味された更に厳しい数字が示されると予測されています。この10月公表数字を基に、秋ごろ、恐らく10月末から11月ごろに次期介護報酬改定の改定率が決定されることとなります。その決定された改定率を踏まえて、年明け令和6年1月~2月にサービスごとの単位数や、加算の単位数が割り振られて決定することになります。まずは、秋ごろに決定される改定率が、プラス改定となるのか?それともマイナス改定となってしまうのか?何%の改定率となるのか?大変注目であります。

現在の介護事業を取り巻く環境は厳しい状況にあります。人手不足の状況により、人件費や採用費、労務管理費が高まり続けており、加えて、コロナ禍による大きな影響と、物価高騰により更なる収益圧迫の状態にあります。前述した経営概況調査による収支差率の結果からも苦しい状況は明らかであります。このような状況の中で、次期介護報酬改定の改定率において、マイナス改定などあり得ないのではないかと楽観視してはいけないと私は思います。私は、場合によってはマイナス改定もあり得るのではないかと危機感を高めています。

理由は大きく2つです。1つは、先般、政府より5月8日をもって、新型コロナの感染症法上の位置づけを5類へと引き下げる方針が示されました。このことによって、5月8日以降コロナ禍は収束に向けた動きへと加速していくこととなります。コロナ禍による3年間で国の財政事情はいっそう苦しい情勢となっており、借金残高も増え続けている状況になります。財務省をはじめとする財政再建派は、この機会に反転攻勢に出て、強力な財政再建、社会保障の抑制、医療・介護報酬のマイナス改定に向けた圧力が高まってくることが予測されるからです。2つ目の理由は、政府の来年度以降の予算策定において「子ども対策」と「防衛費」に対して、大きな予算が割かれる方針が示されていることです。岸田総理は、今通常国会開催冒頭の初心表明演説においても、次元を超えた子ども対策を行うことと、防衛費を5年間で43兆円とする方針を発表しています。進行し続ける少子化の状況や、ウクライナ情勢を鑑みると、子ども対策や防衛費の積み増しを好意的に受け止めている人も多いと思います。私も一定の対応が必要であると共感できますが、財源は限られているのです。この2つの予算に大きな金額が割かれるということは、おのずとその他の支出は圧縮されることとなります。つまり、社会保障費の抑制、医療・介護報酬改定のマイナス改定の圧力が強まることになるのです。

これらの予算策定の状況とともに、改定率の決定する秋ごろの政治情勢や、コロナ禍と物価高騰による影響や、最新の経営実態調査による収支差率の結果などを総合的に判断し、改定率は決定されることとなります。決して楽観視できる材料ばかりではありません。今後の動向にしっかりと注視していくことが大切であります。

 

斉藤 正行氏

・ 一般社団法人全国介護事業者連盟 理事長
・ 株式会社日本介護ベンチャーコンサルティンググループ 代表取締役
・ 一般社団法人日本デイサービス協会 名誉顧問
・ 一般社団法人日本在宅介護協会東京支部 監査
・ 一般社団法人全日本業界活性化団体連合会 専務理事
その他、介護関連企業・団体の要職を歴任