科学的介護の推進、LIFEの本格活用に伴うアウトカム評価の更なる拡充

2023.03.17

いよいよ次期介護報酬改定に向けた議論がこれから本格化していきます。大きなテーマの1つは科学的介護の推進、LIFEの本格導入であります。LIFEは前回改定において導入がスタートされることとなりましたが、現場の評判は芳しくありません。膨大な時間と労力をかけてデータ入力をしても加算の金額は極めて限定的であることから割に合わないと感じる方も多いです。しかしながら、前回改定はあくまで序章であり、次期改定においてからが導入に向けた本番であると言っても過言では無いと思います。

科学的介護推進体制加算を始めとする各種の加算は、該当サービスについても居宅介護支援をはじめとして増えてくると思います。更には、加算の単位数も大きく拡充され、加算の種類も大きく増えることが予測されます。また、フィードバックデータについても、現在は、事業所ごとの分析結果のみとなっていますが、今後は、利用者ごとの分析結果のフィードバックデータもいよいよ期待されるところです。昨年末に介護保険部会においてとりまとめられた「介護保険制度の見直しに関する意見」においても、「科学的介護の推進」「LIFEのフィードバックの改善や収集項目の精査」の必要性が示されています。

このような見通しの中で、とりわけ注目すべきは、アウトカム評価の拡充のゆくえです。つまり介護プロセスではなく結果に対する評価を行っていくことです。前回改定では、「ADL維持等加算」という要介護高齢者のADL(身体機能)をバーセルインデックス(BI)という評価スケールに基づき評価し、その維持・改善状況を踏まえて加算算定のできるアウトカム加算が大幅に拡充をされました。単位数が10倍となり、該当サービスも増え、算定要件も大きく緩和されました。そして、令和5年3月6日に開催された規制改革推進会議の作業部会においては、この「ADL維持等加算」と同様のアウトカム加算をLIFEで収集している要介護高齢者の「口腔機能」や「栄養状態」に対しても創設すべきであるなど、更なる拡充の必要性が指摘され、厚生労働省からもその方針が示されました。

いよいよ、介護業界において、お世話型の介護から、成果を求める科学的介護へのシフトチェンジが求められることとなります。しかしながら、単なる状態に対する維持・改善のアプローチのみを重視するのではなく、QOL(生活の質)を高める事が最も大切であるという事を決して忘れてはなりません。同時に、科学的介護の推進、LIFEの本格運用を行う上で、職員の理解と協力は不可欠であり、現場に対する生産性の向上による負担軽減策を講じた上で、科学的介護に取り組むための時間確保も必要となります。科学的介護の推進は、介護分野におけるプロフェッショナル性の確立にも繋がる大変重要なテーマであり、介護現場の皆様には、是非とも積極的な取組みを行って欲しいと切に願います。

 

斉藤 正行氏

・ 一般社団法人全国介護事業者連盟 理事長
・ 株式会社日本介護ベンチャーコンサルティンググループ 代表取締役
・ 一般社団法人日本デイサービス協会 名誉顧問
・ 一般社団法人日本在宅介護協会東京支部 監査
・ 一般社団法人全日本業界活性化団体連合会 専務理事
その他、介護関連企業・団体の要職を歴任