介護現場の物価高騰に対する追加対策のゆくえ

2023.03.24

ロシアとウクライナの戦争による影響から生じている物価の高騰が長期化しています。介護現場においても電気代、ガス代、ガソリン代、食費など様々な経費が高騰しており収益環境が悪化し続けています。このような情勢を踏まえて、昨年9月に、政府は、新型コロナウイルス感染症対応地方臨時創生交付金における「電気・ガス・食料品等価格高騰重点支援地方交付金」を創設しました。6000億円という大きな予算を確保頂き、8種類の推奨メニューの1つに医療、介護、保育、障害福祉事業の支援を加えて頂き、昨年末から今年に入り、各自治体において補助金の形で現場に配布されたところであります。

しかしながら、その後も物価高騰の状況は改善されるどころか、更なる価格高騰の傾向にあります。このような情勢を踏まえて、政府では、現在、追加での経済対策を予備費を活用することで検討しています。令和5年の3月に入り、全国介護事業者連盟、全国老人福祉施設協議会、老人保健施設連盟、介護人材研究会、全国介護事業者協議会などの7団体が連携し、連名による要望活動が行われました。麻生太郎自由民主党副総裁を会長とする介護福祉議員連盟、地域包括ケアシステム推進議員連盟、末松信介参議院議員を会長とする地域の介護と福祉を考える参議院議員の会のそれぞれに要望書が提出されました。この議員連盟を通じて、萩生田光一自由民主党政務調査会長に要望申し入れが行われ、3月15日に開催された政務調査会において取りまとめられた「エネルギー・食料品価格高騰等への追加対策に向けた提言」の中に、「エネルギー価格高騰対策の具体化に際しては、医療・介護・保育をはじめ」「負担軽減策がきめ細かく行き渡るよう十分留意すること」と記されており、この提言が、同日に岸田文雄内閣総理大臣に提出されました。

まだ、正式な決定が行われたわけではなく、今後、政府内で検討が進められ、3月中に追加対策の大枠が固められる予定となっています。介護現場に対する追加対策の具体的な内容は、昨年と同様の交付金の拡充となるかどうかを含めて、これから詰められることとになります。仮に、介護現場へ何らからの形で配布されることが決定されたとしても、実際に手元に届くことになるのは、まだ一定の期間を要することにはなりますが、現場としては、是非朗報を期待したいと思います。

物価高騰による影響は、介護現場のみならずあらゆる業界や家庭、個人に及んでいますが、他の産業と異なり、介護報酬によって売上価格が固定されている介護業界では値上げによる利益確保が限定的となってしまうことからも、何らかの公的支援が必要であると思いますので、今後の政府対策に注目していきたいと思います。

 

斉藤 正行氏

・ 一般社団法人全国介護事業者連盟 理事長
・ 株式会社日本介護ベンチャーコンサルティンググループ 代表取締役
・ 一般社団法人日本デイサービス協会 名誉顧問
・ 一般社団法人日本在宅介護協会東京支部 監査
・ 一般社団法人全日本業界活性化団体連合会 専務理事
その他、介護関連企業・団体の要職を歴任