財務省にて財政審における社会保障改革が示される

2023.05.26

令和5年5月11日、財務省による財政制度等審議会財政制度分科会(通称、財政審)が、社会保障(こども・高齢化等)をテーマに開催されました。毎年春に提言される財政審での意見提言に、我々、介護・福祉事業者は戦々恐々としてきました。とりわけ、今回は、次期介護報酬を目前に控えたタイミングであり、報酬改定の議論にも大きな影響を及ぼすことが予測されており、中身に注目が集まっていました。

そして、ついに開催された財政審において、財務省より示された社会保障改革に向けた提言の中身ですが、想定していた範疇の内容となっており、正直一安心という気持ちであります。

当然ながら、財政再建に向けた報酬削減案がいくつも示されていますので、提言の内容に賛同できる項目は少ないものの、目新しい改革提言内容はほとんどありませんでした。いつもの財政審では、かなり厳しいと感じる報酬削減案がいくつも示されているのですが、今回の内容は、いずれもすでに、関係各位で議論が行われている内容ばかりであり、今回の提言によって新しい議論を呼び起こすような流れには繋がらないと思います。

具体的には、例えば、介護において、示された意見提言内容は、介護保険法改正の議論において積み残した事項でもある「利用者の負担割合の拡大」、「老人保健施設における多床室の室料負担について」、更には、今回の法改正案では見送りとなり、2027年改正において結論を出すことが示された「居宅介護支援におけるケアプラン作成の利用者負担の設定」、「生活援助サービスをはじめとした訪問介護・通所介護における要介護1と2の方に対する総合事業への移管」、加えて、「経営の協働化、大規模化の推進」、「介護事業者の現預金、積立金について」、「サービス付き高齢者向け住宅などの集合住宅に対する減算拡大と、ケアマネジメントの適正化」などであり、いずれも、賛同できる内容は少なく、反証していきたいとは思いますが、すでに継続して議論が行なわれ続けている内容ばかりであります。障害福祉サービスにおいても同様であります。

この財政審の中身が想定内にとどまった背景には、やはり、昨今の物価高騰による影響などを踏まえた世論の声への配慮が大きいと思います。

そして、更には、なんと財務省から「人材紹介会社の手数料問題への規制強化」、「ICTの活用による生産性向上、人員要件の緩和」、「アウトカム評価の更なる拡充」など、業界内で賛否は残るものの、事業者の賛同の多いテーマも複数提示されました。特に、人材紹介会社の規制強化は、介護現場のほとんどが同意できる内容です。実は、昨年末より、財務省とは全国介護事業者連盟として、様々な意見交換を行ってまいりました。我々のロビー活動も一定功を奏しているとも感じています。

そして、これから注目すべきは、令和6年6月ごろに政府が「骨太方針2023」を策定するので、その内容についてです。この骨太方針にて示された大方針を基に、今後の介護報酬改定の議論へと繋がっていくことになります。骨太方針の中身には、財政審で示された改革提言が盛り込まれる可能性が高いのですが、その財審の中身が想定の範囲でとどまったということは、これからの介護報酬改定において、我々介護業界としては幸先の良い議論の始まりであると言えると思います。

 

斉藤 正行氏

一般社団法人全国介護事業者連盟 理事長

現場主導による制度改革の実現に向けて介護及び障害福祉事業者による大同団結を目指す横断型(法人種別・サービス種別)の事業者団体

http://kaiziren.or.jp/