次期介護報酬改定の改定率の決定に向けた攻防

2023.06.09

次期(2024年)介護報酬改定の改定率に向けた攻防が活発化してきました。プラス改定とマイナス改定のはざまで、政府と与党及び関係団体も巻き込み綱引きが行われています。

先週の本コラムにおいて、介護関係11団体連名で、自民党政務調査会社会保障制度調査会に要望を行い、自民党政務調査会として岸田文雄内閣総理大臣に対して、次期報酬改定における大幅な報酬引き上げの要望を行って頂いたことをお伝えしました。

その後、政府内では、財務省を中心とした財政再建を主導的に進めるメンバーによって、子ども対策の財源として1兆円から2兆円程度を社会保障費の抑制にて確保する案が取りまとめられ、新聞等のメディアでこの案が記事として掲載されました。社会保障費の抑制とは、つまりは次期報酬改定におけるマイナス改定を意味しています。当然ながら、この案は一案に過ぎず、決定していることではありません。この報道を受けて、早速、5月26日に開催された自民党政務調査会全体会議では、参加議員より社会保障費の抑制案への反対意見が多数あがっており、綱引きの攻防が激しさを増していることは間違いありません。

いずれにせよ、次期報酬改定の改定率が決定するのは秋から年末にかけての時期であり、現段階では、まだプラスともマイナスとも見通せる時期にはありません。この先まず、注目すべきは、6月後半ごろに閣議決定が予定されている『骨太方針2023』の中身です。骨太方針は、政府の経済と財政の基本方針であり、示された内容は確実に実行へと移されることとなります。万一、『骨太方針2023』に、「子ども対策の財源確保に社会保障費の適正化」との記述が為されることとなれば、マイナス改定の可能性が極めて高くなります。この骨太方針の中身は、現在、政府と自民党で調整が行われている真っ只中にあり、6月半ばには、原案がまとまると言われています。

私は、解散総選挙が囁かれているような情勢も踏まえると、よもや医療・介護業界を敵に回すような対応は取り難いのではないかと予測しており、『骨太方針2023』にマイナス改定を意味する記述が行われる可能性は低いとみていますが、予断を許すことはできない状況にあります。何より、3年の長きに渡るコロナ禍は、介護現場では未だ対応継続中であり、加えて長引く物価の高騰による事業への大きな影響を考慮すれば、次期報酬改定でのマイナス改定の決断は絶対にあってはならないと思います。

また、『骨太方針2023』の中身については、改定率のみならず、処遇改善や生産性向上に向けた取組みなど、その他の記述も含めて大いに注目していくべきであり、次期報酬改定に向けて1つ大きな山場を迎えようとしています。

 

斉藤 正行氏

一般社団法人全国介護事業者連盟 理事長

現場主導による制度改革の実現に向けて介護及び障害福祉事業者による大同団結を目指す横断型(法人種別・サービス種別)の事業者団体

http://kaiziren.or.jp/