介護給付費分科会で次期介護報酬改定に向けた議論がついにスタート

令和5年5月24日に開かれた第217回介護給付費分科会において、次期(2024年)介護報酬改定に向けた議論が、ついに開始されました。今回は初回であり、今後の検討の進め方として、「スケジュール」と「4つの分野横断テーマ」が示されました。
まず、スケジュールは、6月から夏ごろにかけて、各サービスそれぞれの論点について議論が行われることとなります。そして9月ごろに、事業者団体等からのヒアリングを行い、現場からの意見を収集します。その後、10月から12月頃に、各サービスそれぞれの見直しの具体的な方向性について議論が行われ、12月中に、報酬・基準に関する基本的な考え方の整理・取りまとめが行われます。その過程において、11月から12月頃に、全体の改定率が決定される予定です。年が明けて、令和6年1月に、令和6年度政府予算の編成において、介護報酬改定案の諮問・答申が行われ、1月の後半から2月頃に、全サービスの改定率と改定の中身が公表されることになります。6月からの各サービスそれぞれの議論においては、基本的に、各サービス2回の議論が行われることとなります。2回の議論の中で方向性がまとまらなかったサービスについては、3回・4回の議論が行われることとなります。
また、「4つの分野横断テーマ」も示されました。この4つのテーマに基づき、各サービスの見直し項目についても示されていくこととなります。①地域包括ケアシステムの深化・推進、②自立支援・重度化防止を重視した質の高い介護サービスの推進、③介護人材の確保と介護現場の生産性の向上、④制度の安定性・持続可能性の確保の4つとなります。この4つは、いずれも、前回(2021年)介護報酬改定において示された5つの分野横断テーマの内容を踏襲しています。前回の5つのテーマのうち「感染症や災害への対応力強化」のみが今回のテーマからは見送られました。その他4つのテーマは、前回と全く同様のテーマか、一部文言修正されたテーマかのいずれかとなっています。注目すべきは、2つ目のテーマである自立支援・重症化防止についてであり、前回は「取組の推進」とされていたものが、今回は「質の高い介護サービスの推進」とされています。自立支援・重度化防止に資するサービスを行うことこそが、介護サービスの質を高めるポイントであり、その推進に向けた評価・拡充を行っていくというメッセージであります。つまりは、自立支援や重度化防止、更には科学的介護(LIFE)に関連する加算の種類が増え、点数が上がっていくことを意味しています。次期介護報酬改定は、過去最大規模の見直し項目多数と言われた前回報酬改定で示された見直し内容が、いよいよ本格導入されることになるのだと理解しておくことが正しい解釈であると思います。
加えて、今回の介護給付費分科会では、「令和6年度の同時報酬改定に向けた意見交換会」として3月より行われ意見交換会の中身についても報告されました。介護報酬改定に大きく影響する部分としては、訪問看護におけるリハビリテーション専門職の配置要件の割合に関する指摘が行われています。次期報酬改定において、前回改定に続いて再び論点となることが予測されます。
いずれにせよ、いよいよ各サービスの具体的な議論が行われることとなります。これからの介護給付費分科会での議論に注目し、次期介護報酬改定における見直しの中身が見えてくることとなります。

斉藤 正行氏
一般社団法人全国介護事業者連盟 理事長
現場主導による制度改革の実現に向けて介護及び障害福祉事業者による大同団結を目指す横断型(法人種別・サービス種別)の事業者団体