骨太方針2023が閣議決定。介護報酬改定の改定率は年内決着へ

令和5年5月16日に、「経済財政運営と改革の基本方針2023(骨太方針2023)」が閣議決定をされました。最大の焦点となった「少子化対策」に関する財源についての詳細は、年内へ決着が持ち越しとなりました。とにもかくにも、ひとまず、この「骨太方針2023」の決定時点で、次期介護報酬のマイナス改定が確定してしまうような事態は避けることが出来て、一安心しています。 しかしながら、少子化対策に向けた「歳出改革」は明記されており、国の支出の半分は社会保障費であることを鑑みると、年内での報酬改定の改定率決定において、決して楽観視ができるような情勢でないことは明らかであります。
具体的な改定率に関連する「骨太方針2023」の文言を確認してみると、例えば、中長期の経済財政運営の基本的考え方として、『歳出構造を平時に戻していくとともに、緊急時の財政支出を必要以上に長期化・恒常化させないよう取り組む。』と記されています。つまり、経済対応において、コロナ禍は完全に終結し、平時に戻すという方針が示されるとともに、コロナ対策や物価高騰対策への支出は恒常化させないということであり、報酬改定において、コロナ対策や物価高騰対策としての恒常的なプラス評価を行わないことを意味しています。更には、持続可能な社会保障制度の構築に向けて、『医療・介護等の不断の改革により、ワイズスペンディングを徹底し、保険料負担の上昇を抑制することが極めて重要である。』『全世代型社会保障の実現に向けて、改革の工程251の具体化を進めていく。』と記されています。
はっきりとした報酬削減の記述はありませんが、プラス改定が難しいことを示しています。加えて、『次期診療報酬・介護報酬・障害福祉サービス等報酬の同時改定においては、物価高騰・賃金上昇、経営の状況、支え手が減少する中での人材確保の必要性、患者・利用者負担・保険料負担への影響を踏まえ、患者・利用者が必要なサービスが受けられるよう、必要な対応を行う。』と記されています。物価高騰や人材確保など介護現場を考慮する必要性を示すとともに、利用者負担の引き上げとなるプラス改定への危惧を記載する両論併記の内容となっています。
今回の「骨太方針2023」においては、その他にも介護に関連する記述は複数示されており、その他の詳細記述については、次回のコラムにおいて解説することとしたいと思います。いずれにせよ、まずは、報酬改定の改定率におけるプラス改定・マイナス改定の攻防戦が1つの大きな山場を越えることができ、マイナス改定を確定することは避けることが出来ただけでも御の字と考えるべきと思います。改定率の決着が秋から年末まで持ち越しとなりますが、いよいよ次期介護報酬改定は、これから介護給付費分科会においてサービスごとの具体的な議論となります。今後も益々、報酬改定に向けた議論に注目していきたいと思います。

斉藤 正行氏
一般社団法人全国介護事業者連盟 理事長
現場主導による制度改革の実現に向けて介護及び障害福祉事業者による大同団結を目指す横断型(法人種別・サービス種別)の事業者団体