日常生活支援総合事業(総合事業)の枠組みの見直しに期待

令和5年5月31日に、厚生労働省による「第2回介護予防・日常生活支援総合事業の充実に向けた検討会」が開催されました。今回、ヒアリング団体として全国介護事業者連盟を代表し、私も参加し意見提言を致しました。
日常生活支援総合事業(いわゆる総合事業)の枠組みが、今後大きく見直される可能性を強く感じることが出来ました。2015年介護報酬改定において、訪問介護・通所介護の要支援1と2の方は、介護予防給付から外れ、総合事業へと移管される事となりました。従来、介護予防サービスとして要介護高齢者の介護保険サービスと一体的に運営していた事業は、新しい総合事業における従前相当サービスもしくは緩和型Aのサービスへと、段階的に移管されることとなりました。ここで大きな問題が生じているのが、総合事業の運営は、全国の市区町村に委ねられており、報酬単位や運営基準は自治体の裁量に全面的に任されています。運営ルールの設定において自治体ごとに大きな差が生じることとなり、自治体によっては乱暴な単位設定を行うケースも散見されています。
例えば、単純にサービス時間が半分になれば、単位を半分とするような考え方などは、事業者の立場としては、家賃などの固定費が発生するためコストは単純に半分とならないことへの配慮が全く無いことを意味します。結果として、全国各地の自治体で、訪問介護・通所介護ともに緩和型のAサービスの採算がとれずに、事業所を撤退するケースが相次いでおり、供給不足となり、利用者が適切なサービスを受けることが出来ない状況も散見されています。ある地域においては、隣接する市町村において、全く同じサービスを同じ時間数で提供しているにもかかわらず、単位が3倍近く異なるケースも確認されており、利用者にとっても大きく公平性を欠く状況であることが危惧されています。
このような状況を踏まえて、先の検討会では、全国介護事業者連盟からの意見提言においては、7つの提言を行いました。①合理性を欠く過度なローカルルールの是正・ガイドライン策定。②利用者に対する認知度向上、必要なサービス量と質の確保。③介護保険事業と総合事業の連携強化・一体的運営支援。④事業者の人材不足への対策、利用者や地域との運営協力。⑤介護保険・介護予防・総合事業の一体的な評価体制の構築。⑥きめ細やかなケアマネジメント体制の実現に向けた見直し。⑦利用者の交通手段に対する支援など、その他要望。意見提言の発表の後の構成員との意見交換の場においては、委員から「総合事業の在り方を抜本的に見直すべき時期にきているのではないか」との発言もありました。
もちろん、これから、急速に総合事業の枠組みが見直されるような状況では、まだないと思います。しかしながら、財務省からの意見提言なども踏まえて介護保険法改正のテーマの1つに、生活援助サービスや訪問介護・通所介護の要介護1と2の方の総合事業への移管の検討議論が生じている状況があります。現在の枠組みのまま、総合事業に要介護1と2が移管されてしまえば、地域によっては報酬が、2割・3割と削減される可能性も秘めており、そうなれば多くの事業者が、事業継続をできなくなる可能性が高まります。将来的な軽度者改革の議論も踏まえて、総合事業の枠組みの見直しを進めることは大変重要なテーマであり、少なくとも見直しの気運が高まりつつあることが実感できたことは喜ばしいことだと思います。今後の検討会での継続議論にも注目していきたいと思います。

斉藤 正行氏
一般社団法人全国介護事業者連盟 理事長
現場主導による制度改革の実現に向けて介護及び障害福祉事業者による大同団結を目指す横断型(法人種別・サービス種別)の事業者団体