24年改定 小多機・看多機の現状と課題・論点について

令和5年6月28日に開催されました介護給付費分科会において、いよいよ2024年介護報酬改定における各サービス分類の議論が始まりました。今回は、小規模多機能型居宅介護・看護小規模多機能型居宅介護についての議論の内容を確認し、次期改定に向けた議論のゆくえを確認していきたいと思います。今回は、最初の議論でしたので、現状と課題を確認するとともに、小多機・看多機ともに今後の論点が示されたものの、いずれもほとんど具体的な記述はありませんでした。
小多機の論点は、『利用者の態様や希望に応じて、中重度となっても在宅での生活が継続できるよう支援することを目的として創設された小規模多機能型居宅介護の更なる普及が求められる中、期待されるサービスを安定的に提供する等のために、どのような方策が考えられるか。』
看多機の論点は、『医療ニーズを有する中重度の要介護者の生活を支える地域の拠点である看護小規模多機能型居宅介護の更なる普及が求められる中、期待されるサービスを安定的に提供する等のために、どのような方策が考えられるか。』
論点には、改めて各サービスの特徴を示すとともに、安定的なサービス提供の方策を考える必要性が示されています。つまりは、引き続き、小多機・看多機ともに、事業所を増やすための政策誘導を行っていく意図を読み取ることができます。次期報酬改定においては、12年ぶりとなる新サービス「訪問と通所を組み合わせた複合型サービス」が創設されることとなります。この新サービスの創設に伴い、小多機や看多機の開設に向けた積極的な政策誘導が途絶えるのではないかと、現場からは危惧の声も聞かれますが、そのようなことにはならないと私は思います。ただし、新サービスの中身や今後の開設状況によっては、小多機・看多機の今後の運営に大きな影響が生じる可能性は十分にあります。想定される利用者像が類似している面もありますので、事業運営における競合となることも間違いありません。しかしながら同時に、この新サービスの政策の在り方によっては、小多機・看多機の複雑な基準が緩和され、経営の難易度が下がることも期待されます。いずれにせよ、新サービスの今後のゆくえにも注目していく必要があります。
再度、小多機・看多機の次期報酬改定の論点予測へと話を戻すと、両サービス共通のテーマとしては、前回改定(21年改定)で見直された29名定員枠の拡大への柔軟化と、サービス定員超過の減算に対する緩和措置については、改定検証等の結果を踏まえた更なる見直しが検討される可能性があります。つまりは29名定員の拡大や、通所・宿泊定員上限の見直しの可能性です。定員拡大は、今後の具体的な議論の1つの論点となる可能性があると思います。また、令和5年度の老健調査では、「集合住宅における小規模多機能型居宅介護のサービス提供状況に関する調査研究事業」が行われます。サ高住や住宅型有料老人ホーム併設での小多機・看多機の運営については課題も多く、批判の声も聞かれますが、本調査を通じた結果に基づき、集合住宅併設型の拡大に向けた議論が行われる可能性もあると思います。更には、小多機・看多機のケアマネジメントの在り方についても論点となる可能性があります。内部でケアマネジメントが完結していることから、居宅介護支援のケアマネジャーと同様の課題を抱えているとの声が、現場からは数多く聞かれます。従って、居宅介護支援事業所において、前回改定で評価された見直し項目などが、同様に議論の対象となる可能性があります。
最後に、各サービスの論点予測をさせて頂くと、小多機については、医療連携や看取りに対する対応が課題であると指摘されており、医療ニーズへの対応評価が検討される可能性があります。また、自立支援・重度化防止や、LIFEに関連する加算の拡充も検討される可能性が高いと思います。看多機については、看取りへの対応が重要なテーマとなることは当然であり、褥瘡マネジメント加算や、排せつ支援加算といった重度者へのアウトカム評価のゆくえなども注目ポイントであると思います。次回秋ごろに行われる介護給付費分科会での2回目の議論では、具体的な論点が複数提示されることになると思います。今後の議論の動向を注目していきたいと思います。

斉藤 正行氏
一般社団法人全国介護事業者連盟 理事長
現場主導による制度改革の実現に向けて介護及び障害福祉事業者による大同団結を目指す横断型(法人種別・サービス種別)の事業者団体