24年改定デイサービスの現状と課題・論点について

2023.07.28

6月末より介護給付費分科会において、いよいよ次期介護報酬改定における各サービス分類の議論が始まりました。7月10日開催では、通所介護・地域密着型通所介護・認知症対応型通所介護の1回目の議論が行われました。その議論内容を確認するとともに、デイサービスの今後の展望、課題、方向性、次期改定に向けた論点について論考したいと思います。7月10日の第1回目の議論では、現状と課題を確認するとともに、今後の論点が示されました。「利用者に必要な日常生活上の機能向上並びに自立支援につながる質の高いサービスを提供する観点などから、どのような方策が考えられるか。」と記載されており、具体的な記述には乏しく、2回目・3回目以降の議論の具体化されていくことになると思います。ただし、現状と課題として示された内容や、参加委員からの意見、また老健調査等の結果を踏まえて、今後の論点についてもある程度の予測を立てることが出来ます。

まず、デイサービスの収支差率の悪化が顕著であることが改めて示されました。令和3年度決算では、前年対比で、通所介護はマイナス2.8%、地域密着型通所介護はマイナス0.6%、認知症対応型通所介護はマイナス4.9%と、他サービスと比べても大きなマイナス結果となっています。福祉医療機構による調査では、デイサービスの約半数が赤字であるとの結果も示されており、委員の多くからも次期改定での報酬増を求める声があがりました。収支差率悪化の最大要因は、コロナ禍による利用控えに伴う収入減にあると考えられます。前回改定において取り入れられた新型コロナの影響を考慮した「3%加算等」の扱いについて、コロナ禍の状況変化を踏まえた上で、形を変えた継続対応が期待されます。

更には、加算の算定状況の最新データも示されましたが、新設された「入浴介助加算Ⅱ」の算定率が、各10%前後と低調であったことから、算定要件の見直し等を求める声があがりました。次期改定の論点の1つになると思います。他にも見直しの論点となる予測がされる加算は、「個別機能訓練加算」と「生活機能向上連携加算」です。この2つの加算は、令和4年度老健調査の調査結果も踏まえた上で、見直しが行われることになると思います。更には、他のサービス分類も含めた議論となりますが、「LIFEに関連する加算」の拡充や、「ADL維持等加算」を含めたアウトカム評価の更なる拡充、認知症への対応強化などが論点となることが予測されます。

また、令和5年度老健調査では、デイサービスは「社会参加活動の実施」をテーマとすることが公表されており、デイサービスにおける地域連携の推進、更には、要介護高齢者の有償ボランティア活動や、社会参加活動の状況調査となることから、次期改定での考え方の整理に繋がっていくと思います。加えて、障害者・障害児との共生型サービスの在り方についても何らかの見直しが行われる可能性もあります。

最後に、中期的なテーマを予測すると、軽度者改革は、3年後の法改正での議論のテーマとなります。合わせて、総合事業の在り方についても、今後見直しが予測されています。保険外サービスの活発化に向けた議論もテーマになると思います。加えて、施設や、グループホーム、居宅支援等で先行して議論されている「DX推進に伴う人員体制の見直し」議論も、いずれデイサービスにも及ぶことが予測されます。これらの中期的なテーマが、次期改定において、どの程度の議論が行われることになるのかも注目ポイントの1つです。

前回改定においてもデイサービスは、見直し項目が多かったサービス分類の1つです。次期改定においても、盛りだくさんの見直しが行われる可能性が高いと思います。これからの議論の動向に注視していかなければなりません。

 
 

斉藤 正行氏

一般社団法人全国介護事業者連盟 理事長

現場主導による制度改革の実現に向けて介護及び障害福祉事業者による大同団結を目指す横断型(法人種別・サービス種別)の事業者団体

http://kaiziren.or.jp/