外国人介護人材活用における訪問介護への解禁議論が始まる

2023.08.10

令和5年7月24日、「第1回外国人介護人材の業務の在り方に関する検討会」が開催されました。技能実習制度及び、特定技能制度における介護固有要件の見直しに向けた議論が、いよいよ開始されました。私自身も全国介護事業者連盟を代表して委員として検討会の議論に参加しています。

技能実習制度は、平成28年10月に対象職種に介護が加えられた3年を目途に、必要に応じた見直しを行うこととされていました。しかしながら、その後コロナ禍の状況の中で、外国人が十分に活用出来ない状況が続いておりました。今年に入り、新型コロナが感染症法上5類へと分類され、本格的な外国人活用に向けた機運が高まってきたことから、議論が始まることとなりました。

また、昨年末に政府が設置した「技能実習制度及び特定技能制度の在り方に関する有識者会議」が令和5年5月11日にとりまとめた中間報告書では、技能実習制度を廃止し、新たな制度を創設する方針が示されました。新しい制度の立て付けによって、介護固有要件の見直し議論も影響を受けることとなります。

 

第1回目の検討会では、令和5年末に議論の取りまとめを行うスケジュールと、3つの検討項目が示されました。

①訪問系サービスなどへの従事について、具体的には「訪問系サービスなどについては、技能実習「介護」、特定技能「介護」等の外国人介護人材の従事が認められていない。これらの施設における外国人介護人材の受入について、どう考えるか。」

②事業所開設後3年要件について、具体的には「技能実習「介護」では、経営が一定程度安定している事業所として設立後3年を経過している事業所が対象となっているが、これをどう考えるか。」

③技能実習「介護」等の人員配置基準について、具体的には「技能実習「介護」等において、就労開始後6ヶ月を経過した者について、介護技能や業務に必要な日本語能力がある程度向上することなどの理由により、介護施設の人員配置基準に算定しているが、その取扱いについてどう考えるか。」

 

検討会翌日の大手新聞の1面には「外国人の訪問介護への解禁」の見出し記事が多数掲載されました。ただし、議論はまだ始まったばかりであり、決定事項ではありません。委員の中にも慎重姿勢の方も多く、丁寧な議論が求められます。しかしながら、方向性としては、3つの検討事項は、全て見直しされる方向性で議論は進んでいくと予測されます。もちろん懸念事項も多いですので、訪問系サービスへの従事については、1対1で自宅に訪問することに対しては、私をはじめとして賛同する委員の多くからも慎重な議論を求める声があがりました。サービス付き高齢者向け住宅や、住宅型有料老人ホームなどの集合住宅での従事や、訪問入浴など、複数名で従事するケースを最初のステップとして見直しが進められる可能性は、高いと思います。

集合住宅を運営している事業者の多くからは、期待の声が高まっていると感じますが、ただし、まだまだ時間を要します。大前提として、技能実習制度に代わる新制度の開始とタイミングを合わせて、介護固有要件の見直しも進められることが想定されるので、開始時期は1年から2年先となることを理解しておかなければなりません。いずれにせよ、今後の議論のゆくえに是非とも注目してください。

 
 

斉藤 正行氏

一般社団法人全国介護事業者連盟 理事長

現場主導による制度改革の実現に向けて介護及び障害福祉事業者による大同団結を目指す横断型(法人種別・サービス種別)の事業者団体

http://kaiziren.or.jp/