24年改定訪問介護の現状と課題・論点について

6月末より介護給付費分科会において、次期介護報酬改定における各サービス分類の議論が開始しています。7月24日開催では、訪問介護の1回目の議論が行われました。
その議論内容を確認するとともに、訪問介護の今後の展望、課題、方向性、次期改定に向けた論点について論考したいと思います。7月24日の第1回目の議論では、現状と課題を確認するとともに、今後の論点が示されました。具体的には「介護サービスの需要が増加する一方で、訪問介護員の不足感が強い状況である中、利用者の状態に応じて必要となるサービスを安定的に提供するために、どのような方策が考えられるか。」と記載されており、具体的な記述には乏しく、2回目・3回目以降の議論において、具体化されていくことになると思います。ただし、現状と課題として示された内容や、参加委員からの意見、また各種調査等の結果を踏まえて、今後の論点についてもある程度の予測を立てることは出来ます。
まず、訪問介護の現状と課題の中で注目すべきは、事業所数は毎年僅かずつですが、確実に増加していることです。直近数字では、過去最大の3万4,372事業所となります。ヘルパー不足の中、地方ではヘルパー不足により閉鎖する事業所も散見されていますが、全体での事業所数は増加しています。背景には、要介護高齢者は毎年増加していることから、ニーズに応じて事業所数が安定的に増加していることや、サービス付き高齢者向け住宅や住宅型有料老人ホーム等の集合住宅との併設での訪問介護事業所の増加が想定をされます。集合住宅との併設を除いた事業所数を把握することは困難であり、訪問介護の実態が見え難くなっており、報酬改定において適切な対応が取り難くなる一因となっていると思います。
また、分科会では、深刻なヘルパー不足についてのデータも示されました。最新データの有効求人倍率は、施設職員3.7倍に対して、訪問介護職は15.53倍となっています。委員の多数からもヘルパー不足への対応として、報酬の増額や処遇改善などの対策を講じる必要性の声があがりました。ヘルパー不足が深刻であることは間違いありませんが、しかしながら、実感として施設の4~5倍もの人手不足であるのだろうか?と疑問を感じる方も多いのではないでしょうか?私は、訪問介護の事業特性に起因していると推測しています。施設やデイサービスと異なり、訪問介護では利用者定員が定められていないため、仮に、現状ヘルパーが充足している事業所の場合でも、更なるヘルパーが確保できれば、利用者獲得に繋げることが出来るため、ハローワーク等への求人広告を掲載し続けている可能性が高いため、実態以上の有効求人倍率となるのではないかと推察しています。今後、より正確な実態把握を踏まえた上で議論を進めていくことが重要であると思います。
検討会での具体的な論点提示はこれからとなりますが、いくつか予測される論点をお示ししたいと思います。まずは、科学的介護の推進であり、訪問介護にもLIFE関連加算がいよいよ創設される可能性が高まってきています。同様に、自立支援・重度化防止に向けた取組みを短時間サービスである訪問介護にどのように位置づけていくのかも大きな論点になっていくと思います。また、認知症対応、医療連携も引き続きの重要論点になると思います。生産性の向上や、書類削減も求められることになります。また、集合住宅における集合減算の更なる見直しや、特定事業所加算の限度額の外だし議論も再度行われる可能性もあります。今後の具体的な論点の提示に注目していきたいと思います。

斉藤 正行氏
一般社団法人全国介護事業者連盟 理事長
現場主導による制度改革の実現に向けて介護及び障害福祉事業者による大同団結を目指す横断型(法人種別・サービス種別)の事業者団体