24年改定特別養護老人ホームの現状と課題・論点について

介護給付費分科会における次期介護報酬改定における各サービス分類の議論が開始されており、1回目の議論が全て終了しました。これから8月・9月にかけて関係団体からのヒアリングを行い、その後、2回目・3回目のより具体的な議論が行われることになります。8月7日開催では、特別養護老人ホーム(特養)の1回目の議論も行われました。
その議論内容を確認するとともに、特養の今後の展望、課題、方向性、次期改定に向けた論点について論考したいと思います。8月7日の第1回目の議論では、現状と課題を確認するとともに、今後の論点が示されました。具体的には「今後も中重度の高齢者が増加することが見込まれる中、入所者のニーズにこたえ、安定的にサービスを提供するために、どのような方策が考えられるか。」と記載されており、具体的な記述には乏しく、今後の議論において、具体化されていくことになると思います。ただし、現状と課題として示された内容や、参加委員からの意見、また各種調査等の結果を踏まえて、今後の論点についてもある程度の予測を立てることは出来ます。
まず、特養の収益環境の悪化について、データとともに参加委員の多くが指摘しました。収支差率は令和3年は1.3%と前年対比で0.3%悪化しています。この数字に加えて、物価高騰による影響が加味されれば、更に厳しい収益環境が予測されます。また、福祉医療機構による調査では、特養の約4割が赤字であるとのデータも示されています。このような状況を踏まえて、委員の多くより、次期改定における特養の大幅な報酬増を求める声があがりました。
そして、各種調査による課題では、中重度者に十分な対応が出来ていない特養の現状がデータで示されました。具体的には、配置医師数が1人である特養が全体の67%を占めており、雇用形態も嘱託等の割合が63%となっています。配置医師が不在の際の急変等の対応については、「配置医師によるオンコール対応」が最も多く、次に多いのは「原則、救急搬送」となっています。このような調査結果も踏まえた上で、今回の論点提示となっています。
その他、これからの論点として示される可能性の高いテーマをいくつか予測すると、まずは、前回改定で多数の見直しが行われた「自立支援・重度化防止」「科学的介護」について、次期改定においても、更なる評価・拡充が予測されます。とりわけ、LIFEに関連した加算の見直しや、更なるアウトカム加算についての議論には注目していきたいと思います。
また、生産性の向上やDXの活用に関連して、介護職の人員配置体制3対1の見直しは、次期報酬改定で議論される可能性は極めて低いと思いますが、中期的には議論される可能性を秘めており、次期改定において、次に繋がるどのような議論が行われることになるのかも注目していきたいと思います。
前回改定と同様に、次期改定においても、特養は全てのサービス分類の中でも最も数多くの見直し項目となることが予測されており、これからの制度改革のゆくえを占う大変注目のサービス分類となります。

斉藤 正行氏
一般社団法人全国介護事業者連盟 理事長
現場主導による制度改革の実現に向けて介護及び障害福祉事業者による大同団結を目指す横断型(法人種別・サービス種別)の事業者団体