24年改定特定施設(介護付き有料老人ホーム)の現状と課題・論点について

介護給付費分科会における次期介護報酬改定における各サービス分類の議論が開始されており、1回目の議論が全て終了しました。これから8月・9月にかけて関係団体からヒアリングを行い、その後、2回目・3回目のより具体的な議論が行われることになります。8月7日開催の分科会では、特定施設(介護付き有料老人ホーム)の1回目の議論が行われました。
その議論内容を確認するとともに、特定施設の今後の展望、課題、方向性、次期改定に向けた論点について論考したいと思います。8月7日の第1回目の議論では、現状と課題を確認するとともに、今後の論点が示されました。具体的には「利用者に重度者が多い状況を踏まえ、医療的ケアを必要とする入居者への対応や看取り等への対応の推進などについて、どのような方策が考えられるか。」と記載されており、具体的な記述には乏しいものの、重度・医療対応の必要性の方向性が示されています。今後の議論において、論点は具体化されていくことになると思いますが、現状と課題として示された内容や、参加委員からの意見、また各種調査等の結果を踏まえて、ある程度の予測を立てることは出来ます。
最重要となるポイントは2つです。1つは前述のとおり、重度・医療対応の重視であり、とりわけ看取りへの対応の強化です。昨年度の老健調査によると、特定施設の5割を超える施設で看取りを行っているものの、残る施設では対応が出来てないという調査結果が示されています。対応が出来ていない施設の理由の7割が、「夜間に看護職員がいないから」とされています。これら調査結果を踏まえると『夜間看護体制加算』を拡充し、より多くの施設での夜間看護体制の確立を目指すことや、『看取り介護加算』『入居継続支援加算』『退院・退所時連携加算』などの見直しの可能性もあると思います。
2つ目のポイントは、特例措置として3対1の人員配置基準の見直しについてです。これは、介護業界にとっては最注目のテーマであります。規制改革推進会議より提案された介護ロボットや介護機器の活用に伴う人員配置基準の見直しです。しかしながら、特養等の介護施設においては、3対1の人員配置を3.5対1や4対1とするどころか、3対1の体制でも十分ではなく、より手厚い2対1や2.5対1の体制で運営している施設がほとんどであるとの声が多く、利用者の安全面の確保と職員の負担増を懸念し、業界団体の多くより見直しに慎重論の声があがっています。このような状況を踏まえて介護3施設での見直し議論は当面行われることは控えられ、特定施設に限定した議論が行われることとなります。今年度も追加的な調査を特定施設では継続して行われており、この調査結果を踏まえた今後の議論となるわけですが、仮に、特定施設での3対1の緩和が行われることとなれば、将来的に特養等にも議論が及ぶのではないかと懸念されており、議論の行く末に大きな注目が集まっています。現時点では、議論がどう進むか予測は難しいところですが、もし、議論が前に進む場合でも特定施設の人員配置が一律で3対1から見直しされるわけではなく、あくまで生産性向上を実現し、一定の条件を満たした一部の施設での特例対応となることは間違いありません。
その他に、これからの論点として示される可能性の高いテーマを予測すると、前回改定で特定施設はあまり重視されなかった「自立支援・重度化防止」「科学的介護」について次期改定における1つのポイントになるのではないかと思います。これらの議論のゆくえとともに、前述した3対1の人員配置基準の見直しについては、これからの介護保険制度の在り方を問い直すことにもなりかねない大変重大なテーマであり、議論の行く末に注目していきたいと思います。

斉藤 正行氏
一般社団法人全国介護事業者連盟 理事長
現場主導による制度改革の実現に向けて介護及び障害福祉事業者による大同団結を目指す横断型(法人種別・サービス種別)の事業者団体