賛否両論!訪問+通所複合型新サービス創設に向けた議論が始まる

介護給付費分科会における次期介護報酬改定における各サービス分類の議論が開始されており、1回目の議論が全て終了しました。令和5年8月30日に開催された介護給付費分科会から、いよいよ分野横断テーマに関する議論が始まりました。その中で、「訪問+通所」複合型新サービスの創設に関する議論も行われることとなりました。
この新サービスは、昨年、介護保険制度の見直しに関して介護保険部会で議論が行われ、今年の通常国会において、改正介護保険法案が可決されたことから、創設に向けた環境が整えられました。具体的な新サービスの報酬の在り方、各種基準について、介護給付費分科会において議論され、決定していくこととなります。
第1回目の議論となる今回は、新サービス創設の背景や狙いとともに、昨年度実施された老健調査の報告が行われました。創設の背景には、訪問介護の圧倒的な人手不足のデータが示されるとともに、地域によっては訪問サービスが不足している地域の存在が指摘されています。また、コロナ禍において、通所介護利用者に対して通所介護職員が訪問サービスを提供する臨時的な取扱いが実施されたことなどが、新サービス創設の背景にあります。昨年実施された老健調査の結果においては、訪問系サービスと通所系サービスの双方を利用している利用者のメリットやデメリットが整理して示されました。また、訪問介護と通所介護いずれも50%超の事業者が両方の事業所を運営しているとの結果が示されました。更には、この調査において、参入意欲についても条件つきながら7割以上の事業所が新サービス参入に前向きな意向も示されています。
しかしながら、今回の議論では委員からは新サービス創設に対して賛否両論の激しい意見交換が行われました。「人材の有効活用、柔軟な対応による質の高いサービス提供などが期待できる」「多くの事業者が参入して運営を続けられるよう、しっかりとした報酬設定・制度設計を」といった肯定的な意見が述べられる一方で、「必要性を感じない」「既存の事業者間の連携を深めれば済む問題ではないか」「今でも制度が複雑だと言われているのに、屋上屋を重ねて更に複雑にさせるのは反対」など、厳しい反対意見も見られました。
今回はまず1回目の議論でありましたので、具体的な論点はほとんど示されておらず「居宅要介護者の様々な介護ニーズに柔軟に対応できるよう、複数の在宅サービス(訪問や通所系サービスなど)を組み合わせて提供する新たな複合型サービスを創設することにつてどのように考えるか」と示されており、創設ありきでの論点記載とはなっておりません。この分科会の後に、一部では、新サービス創設は暗礁に乗り上げるのではないか?といった声も上がっています。もちろんこれからの議論次第でありますが、私は予定通りに新サービス創設は行われるものと考えています。前述の通り、すでに改正介護保険法案の可決によって新サービスを創設する環境は整えられております。また昨年度の老健調査においても前向きな結果が示されています。あとは、分科会での様々な意見を踏まえて、懸念点や課題を解決できる制度づくりが行われていくことになるのではないかと思います。
この新サービスは、これからの在宅介護事業に大きな影響を及ぼすとともに、介護保険制度の在り方にも大きな影響を及ぼす可能性も秘めていることから、今後の議論の動向を注視していく必要があります。

斉藤 正行氏
一般社団法人全国介護事業者連盟 理事長
現場主導による制度改革の実現に向けて介護及び障害福祉事業者による大同団結を目指す横断型(法人種別・サービス種別)の事業者団体