次期改定分野横断テーマ議論始まる。【地域包括ケアシステム】【自立支援・重度化防止】はどうなる?

令和5年8月30日に開催された介護給付費分科会から、いよいよ次期報酬改定にむけた分野横断テーマに関する議論が始まりました。まずは2つのテーマ『地域包括ケアシステムの深化・推進』『自立支援・重度化防止を重視した質の高い介護サービスの推進』について、議論の内容の確認と、今後のゆくえを考察したいと思います。
まず『地域包括ケアシステムの深化・推進』では、前回のコラムでお伝えした訪問+通所の複合型新サービス創設に向けた議論とともに、今回3つの項目に基づき議論が行われました。「認知症への対応力強化」「医療・介護連携、人生の最終段階の医療・介護」「地域の特性に応じたサービスの確保」です。
「認知症への対応力強化」に向けては、認知症専門ケア加算をはじめとした前回報酬改定での見直し項目について検討を行い、次期報酬改定において更なる拡充が予測されます。また、同様に前回報酬改定では、資格を保有していない介護職に対して認知症基礎研修の受講を義務付けるルールが定められましたが、猶予期間は来年4月までとなるため、いよいよ期日が迫っています。研修受講状況等を見極めつつ、猶予期間の期日延長を検討するのか?それとも更なる対応が事業者に求められることとなるのか?今後の論点の1つになると思います。また、認知症高齢者におけるBPSD(行動・心理症状)への予防や、重症化の緩和に向けた体制を事業者がどのように構築していくかもポイントとなります。更には、認知症の評価尺度についてもLIFEでの評価尺度と、老健調査等で活用されている評価尺度など、定量評価に基づく認知症ケアの在り方をどのように進めていくのかもこれからの課題となります。
「医療・介護連携、人生の最終段階の医療・介護」について、次期報酬改定は、診療報酬との同時改定であり、とりわけ多数の見直しが想定されます。医療との連携に関する加算の拡充や、連携体制の強化への評価がいっそう行われることが予測されます。また、「人生の最終段階」つまりは看取りへの対応への評価もいっそう行われることが予測されます。ガイドラインの取扱いについても、今後重要性が増していくのではないかと考えられます。
「地域の特性応じたサービスの確保」については、都市部、離島、中山間地域、豪雪地帯などでのサービス提供の確保が引き続きの課題となります。地域単価についても改めた見直しが行われることも予測されます。
その他にも「地域包括ケアシステムの深化・推進」においては、在宅サービス、施設・居住系サービスの在り方について、ケアマネジメントの公正中立性の確保なども議論項目となることが予測され、今後の議論に注目していきたいと思います。
続いて、『自立支援・重度化防止を重視した質の高い介護サービスの推進』のテーマですが、こちらは、今回の審議会で提示されたのは「科学的介護情報システム(LIFE)」に関することのみでありました。LIFEの運用状況と課題について、データや調査研究事業を基に報告されました。LIFEについてはデータ入力の負担軽減や、アウトカム評価の更なる拡充について論点として示されたものの、加算対象サービスの拡充や、更なる関連加算の拡充など、本格的な議論は次回以降への持ち越しとなります。しかしながら、間違いなく次期報酬改定においてLIFE関連加算は、サービス種別の拡大、加算の拡充、アウトカム評価の推進へと繋がることが予測されます。その他にも、リハビリテーション・機能訓練・口腔・栄養との連携・強化や、重度化防止については、今後の議論に注目していきたいと思います。
分野横断テーマについても、サービス種別の議論と同様に、今後、介護給付費分科会においては、関係団体ヒアリングの終了後、10月ごろから、具体的な議論が行われてくることとなります。是非、議論のゆくえをしっかりと確認していきたいと思います。

斉藤 正行氏
一般社団法人全国介護事業者連盟 理事長
現場主導による制度改革の実現に向けて介護及び障害福祉事業者による大同団結を目指す横断型(法人種別・サービス種別)の事業者団体