次期改定分野横断テーマ議論が深まる。これからの給付費分科会のゆくえ

次期報酬改定に向けた4つの分野横断テーマ『地域包括ケアシステムの深化・推進』『自立支援・重度化防止を重視した質の高い介護サービスの推進』『介護人材の確保と介護現場の生産性の向上』『制度の安定性・持続可能性の確保』の議論がいよいよ深まってきました。
『地域包括ケアシステムの深化・推進』では、新たに「感染症への対応力強化」「業務継続に向けた取組の強化」について議論が行われています。合わせて、新型コロナの特例対応についての見直し方針も示されました。令和5年10月より、コロナから回復して病院を退院する高齢者を受け入れた介護施設に支払われる「退所前連携加算」について、最長30日とされていた算定可能日数が14日へと縮小されます。加えて、施設内で新型コロナ罹患者を対応し続けた際に支給される1日1万円の補助額も5千円へと縮小されることとなります。
『自立支援・重度化防止を重視した質の高い介護サービスの推進』では、「LIFE」の議論に加えて、「口腔・栄養」についても議論が行われました。リハビリテーション・機能訓練・口腔・栄養との一体的な取組み強化を更に推進する方向性が示されました。新たな加算創設も期待されます。
最後の『制度の安定性・持続可能性の確保』に向けた議論もスタートしました。まだ、具体的な論点は示されておりませんが、集合住宅における同一建物減算の更なる見直し、訪問看護のリハビリテーション専門職の配置体制や単位数の見直し、加算の統廃合など、これから検討すべきことは沢山あります。
しかしながら、年末の全体改定率の結果によって今後の状況は大きく異なると思います。プラス改定の実現が出来れば、削減に向けた議論は、比較的緩やかとなります。逆に、万一厳しい改定率となった場合には、上述したテーマを含めた削減議論が一気に加速することとなります。合わせて、介護保険制度の見直しにおいて、年末まで議論が持ち越しとされていた「老健の多床室の室料負担の見直し」「利用者の2割負担の拡大」等についてもいよいよ結論を出す時が近づいてきています。
その他の論点としても、地域区分の見直しや、高齢者の虐待防止やリスクマネジメントについての議論が行われる方針が示されています。 給付費分科会では、この後、関係団体のヒアリングを終えて、10月より年末に向けて一気に議論を深めて、次期改定の全ての議論を終えることとなります。これからの2カ月間は最も大切な時期を迎えることとなります。議論のゆくえとともに、全体改定率の決定に大いに注目していきたいと思います。

斉藤 正行氏
一般社団法人全国介護事業者連盟 理事長
現場主導による制度改革の実現に向けて介護及び障害福祉事業者による大同団結を目指す横断型(法人種別・サービス種別)の事業者団体