次期介護報酬改定の6月施行の可能性について

2023.10.20

2024年介護報酬改定の施行時期が6月となる可能性が出てきました。 

10月11日に開催された介護給付費分科会の検討の論点として今年度に行われた改定検証の結果速報と次期改定に向けた基本的な視点とともに示されました。 

次期改定に向けた基本的な視点としては4つの視点が示されました。①地域包括ケアシステムの深化・推進、②自立支援・重度化防止に向けた対応、③良質な介護サービスの確保に向けた働きやすい職場づくり、④制度の安定性・持続可能性の確保となります。いずれも、すでに示されている次期改定に向けた4つの分野横断テーマと同義であり、改めて次期改定の骨格を確認することが出来たと言えます。 

そして、施行次期についても、現状と課題整理が行われた上で、論点として、「介護現場の職員やベンダの負担、医療と介護の給付調整、利用者にとってのわかりやすさ、施行時期が変更された場合の事業所や介護保険事業(支援)計画への影響などを踏まえ、どのような対応が考えられるか。」と示されました。 

次期改定は診療報酬との同時改定となりますが、先行して診療報酬については、6月施行に向けた議論が行われており、6月改定の可能性が高まっている状況にあります。医療DX推進の観点から、報酬改定の詳細発表から4月までの期間の短さが、医療機関や薬局等、更にはソフトベンダ等対応業務が集中し過ぎることなどが理由とされています。この背景は、介護報酬改定でも同様の課題が、長年に渡り指摘されてきていました。従って、介護報酬も同様に施行時期を6月としてはどうかと提起されたのです。加えて、医療機関の一定割合が介護事業を運営しているケースもあり、医療は6月改定、介護は4月改定となれば、非効率ではないかとの意見も上がっています。 

他方で、給付費分科会では、反対の意見も多数上がっており、反対者の見解としては、「コロナ禍や物価高騰の状況の中、プラス改定の実現が望まれており、少しでも早くプラス改定による事業者のサポートが必要である。」といった意見や、自治体への影響を懸念する声も複数あがっており、介護保険計画の策定や予算管理にも大きな影響を及ぼす可能性が指摘されており、これまで通りの4月改定施行維持が求められています。 

給付費分科会では、賛否の分かれる結果となっていますが、その場で意見にはあがりませんでしたが、私は加えて、次期改定において、処遇改善関連加算の1本化の方向性が示されていることも事業者への配慮が不可欠であると感じています。1本化が実現されれば、就業規則、給与規程、評価制度などの見直しの必要性が生じてくることから、流石に詳細発表から1・2カ月の期間で、事業者が対応することは困難であると思います。その観点からも6月施行の検討余地は大いいにあると思っています。もっとも6月施行でも十分な期間であるかは賛否も分かれるところであり、処遇改善関連加算の1本化への対応のみ、期間を更に延長する必要性も合わせて検討しなければならないと思います。 

いずれにせよ、現時点次期介護報酬改定の施行時期は4月か6月となるかの結論は得られておらず、年内までの給付費分科会の議論の過程で方針が示されることになろうかと思いますので、事業者や周辺事業者は、今後の議論の動向に着目してもらたいと思います。 

 
 

斉藤 正行氏

一般社団法人全国介護事業者連盟 理事長

現場主導による制度改革の実現に向けて介護及び障害福祉事業者による大同団結を目指す横断型(法人種別・サービス種別)の事業者団体

http://kaiziren.or.jp/