追加経済対策による介護職員の処遇改善月6000円について

政府が検討を進める追加経済対策において、来年2月より介護職の月額6000円の処遇改善が検討されていることが報じられました。本コラム執筆の段階では、まだ確定された情報ではありませんが、この報道を踏まえ、介護従事者の処遇改善に向けた動向、次期報酬改定のゆくえについて論考したいと思います。
まず、介護職6000円増の処遇改善の報道を、一部誤解されている方もいるかもしれません。仮に、この政策が実現された場合でも、あくまで補正予算による追加経済対策であり、次期報酬改定とは別であります。もちろん、次期改定に大きな影響を及ぼすことは確かですが、この政策決定により、次期改定での処遇改善額が6000円増で確定したわけではありません。実現されれば、ベースアップ加算の導入時と同様、来年2月は、先行して補正予算による手当が行われます。この後、次期改定における改定率の決定に向けた攻防を経て、報酬改定における処遇改善額は決定となります。もちろん、その結果、6000円増でとどまる可能性もありますが、更なる金額のプラスも十分にあり得ると、私は思います。
また、現在、次期改定の施行時期をこれまで通りの4月とするのか?診療報酬と合わせて6月とするスケジュールも検討されており、私は、介護も6月改定になるのではないかと予測しています。次期改定では、現在3種類となっている処遇改善関連加算の1本化が予定されており、1本化が実現された場合には、事業者は、対応方針を決め、就業規則、賃金規程等の見直しを行わなければならないことから、従来のスケジュールでは困難が予測され、6月改定が現実的であるではないでしょうか。
このような背景を考えると、私は、今回の補正予算による6000円増は基本的には、歓迎すべきことであり、政府の処遇改善を目指す姿勢の表れであると思います。もちろんこの金額で処遇改善が十分ではありません。次期改定に向けた更なる処遇改善に向けた第一弾と考えれば上々です。しかしながら、事業者の立場とすれば、今回の改善はあくまで補正予算による対応であり、取得に向けては、計画書や報告書の事務手続きが発生することとなり、数カ月後の報酬改定で一気に対応して欲しかったというのが本音ではないかと思います。だからこそ、次期改定での処遇改善関連加算の1本化による簡素化を大胆に実現頂きたいと思いますし、私は期待できる中身になると思っています。加えて、処遇改善のみならず、コロナ禍と物価高騰により大きな影響を受けた介護事業者の経営の安定を取り戻すため、大幅な基本単位の増を同時に実現しなければ、従事者の雇用の安定にも繋がりません。6000円増のゆくえとともに、次期改定における更なる処遇改善と改定率の決定に注目していきたいと思います。

斉藤 正行氏
一般社団法人全国介護事業者連盟 理事長
現場主導による制度改革の実現に向けて介護及び障害福祉事業者による大同団結を目指す横断型(法人種別・サービス種別)の事業者団体