2024年改定における小多機・看多機・定期巡回の論点がいよいよ明確に

介護給付費分科会における次期介護報酬改定に向けた議論が、いよいよ具体化してきました。関係団体ヒアリングが終了し、令和5年10月後半より、各サービスの2巡目の議論が始まり、論点と対応案が示されることになりました。 今回は、令和5年10月23日に開催された分科会で示された小規模多機能型居宅介護(小多機)・看護小規模多機能型居宅介護(看多機)・定期巡回随時対応型訪問介護看護(定期巡回)の次期改定のゆくえを論考したいと思います。
今回示された小多機の論点は2つ。①認知症対応力の強化、②地域包括ケアの推進と地域共生社会の推進に資する取組。
看多機の論点は2つ。①柔軟なサービス提供のための報酬体系、②地域包括ケアの推進と地域共生社会の推進に資する取組。
定期巡回の論点は3つ。①定期巡回と夜間対応型訪問介護の一体的実施について、②総合マネジメント体制強化加算の見直し、③随時対応サービスの集約化、となります。
小多機では、認知症対応への更なる強化に向けて、現行の認知症加算の拡充や、新加算の創設が検討されています。看多機では、包括報酬の体系の見直しの方向性が示されており、サービス回数の少ない利用者の単価の見直し等が検討されています。定期巡回では、将来的な夜間対応型訪問介護との統合を見据えて、基本報酬に新しい区分を設けて、一体的な実施を図ることの検討や、オペレーターの集約化に際して、都道府県を超えた対応を認めることが検討されています。
これらに加えて、今回、3サービスに共通する大変厳しい論点が1つ示されました。それは、月1000単位の総合マネジメント体制強化加算の基本報酬への組込みの検討です。3サービスいずれも加算の算定率が9割を超えていることから、基本報酬への組込みの方向性が示されましたが、この加算は、区分支給限度額の外に位置づけられており、基本報酬へと組込まれることとなれば、限度額の上限を満たしている利用者の場合には、月1000単位の減収となってしまいます。現時点で正確なデータが示されているわけではありませんが、複数の事業所へのヒアリング状況を踏まえると、3サービスいずれも多くの事業所で、全体の7割程度を超える利用者が、限度額の上限を満たしている可能性があります。包括報酬のためそもそも基本報酬が高く設定されており、福祉用具貸与や、その他サービスと組み合わせれば限度額の上限をすぐに満たすことになります。仮に、全体の7割程度の利用者が限度額の上限を満たしているとすれば、総合マネジメント体制強化加算が本体報酬に組込まれることになれば、大多数の事業所で月額20万円以上の減収となり、利益の減少となる可能性が出てきます。コロナ禍や、物価高騰の影響を受けて厳しい情勢に置かれている事業者には、深刻な影響を及ぼすことになりかねません。
ただし、小多機と看多機については、同時に、地域包括ケアや地域共生社会の推進の観点から、地域に開かれた拠点として利用者の社会参画や、地域連携を実施している取組みに対する新加算の創設が検討されています。この新加算は、区部支給限度額の外に位置づけられることも想定されており、新加算の単位数によっては、リカバリー策を講じることが可能となります。しかしながら、定期巡回には、このようなリカバリー策が現時点では示されていないことから、大きな影響が懸念されます。
いずれにせよ、この論点はまだ決定事項ではなく、あくまで検討の方向性として示された内容であります。今後の議論の推移や、事業者からの反発や懸念の声が高まってくれば、論点の見送りや、修正の可能性も出てくることとなります。小多機、看多機、定期巡回を運営している事業者の皆さんは、是非とも今後の議論のゆくえに注目頂きたいと思います。

斉藤 正行氏
一般社団法人全国介護事業者連盟 理事長
現場主導による制度改革の実現に向けて介護及び障害福祉事業者による大同団結を目指す横断型(法人種別・サービス種別)の事業者団体