全体収支差は前年よりマイナス

令和5年度介護事業経営実態調査の結果が公表

2023.11.24

令和5年11月10日に令和5年度介護事業経営実態調査(令和4年度決算)の結果が公表されました。次期介護報酬改定の改定率の決定に大きな影響を及ぼすこととなります。 

全サービス平均の収支差率は2.4%と、コロナ禍での大きな影響を受けた昨年度の概況調査では2.8%であり、更に0.4%収支率が悪化したことになります。これは、継続したコロナ禍の状況に加えて、物価高騰による影響も大きいと思います。この全体数字を受けて、次期改定のプラス改定の可能性いっそう高まってまいりました。 

個別サービスの収支差率結果を見ていくと、何と言っても特養はマイナス1.0%、老健はマイナス1.1%といずれも調査開始以来で初めてのマイナスの結果となりました。その他にも施設、居住系サービスでは軒並み昨年対比でのマイナス結果となっています。対して、在宅系サービスの多くは昨年対比でプラスとなっていますが、それでも通所介護は1.5%(前年対比プラス0.8%)、地域密着型通所介護は3.6%(前年対比プラス0.5%)、認知症通所介護は4.3%(前年対比0.0%)、小規模多機能は3.5%(前年対比マイナス1.1%)、看多機は4.5%(前年対比プラス0.1%)、居宅介護支援4.9%(前年対比プラス1.2%)と決して収支差率が高いわけではなく、引き続き、厳しい経営状況にあることが示されています。一方で数字だけみれば高い水準の収支差率を示したのが、訪問介護は7.8%(前年対比プラス2.0%)、訪問リハビリは9.1%(前年対比プラス9.5%)、定期巡回は11.0%(前年対比プラス2.9%)、夜間対応型訪問は9.9%(前年対比プラス6.1%)と訪問系サービスです。ただし、かならずしも表面通りの数字で解釈すべきではないと思います。訪問介護は深刻なヘルパー不足から経営環境は厳しく、地方では閉鎖する事業所が多数の状況であり、訪問系サービスは総じてコロナ禍での職員の減少によるやむを得ないコスト削減が進んだ結果として、収支差率が高まったのではないかとの声を多く聞きます。加えて訪問介護においては、集合住宅を中心としている事業所の割合が高まってきていることで収支差率を押し上げた可能性も指摘されています。 

いずれにせよ、この数字結果が次期改定に大きな影響を及ぼすことは間違いなく、施設系サービスにおいては大きな報酬増が期待されるところであります。もちろん、この個別数字だけで単位数の上げ下げが行われるわけではありませんが、すでに介護給付費分科会で示されている各論点において、集合住宅における更なる減算を求める対応案や、定期巡回、小規模多機能、看多機の総合マネジメント体制強化加算の基本報酬への組込みを求める対応案や、訪問看護におけるリハビリ職によるサービスの適正化を求める対応案などは、収支差率を参考としていることは明らかであります。 

ただし、これらマイナスの方向性が示唆されているサービスについても、まだ見直し内容は決定したわけではありませんし、何よりも重要なことは、年末までに決定する全体改定率の数字次第です。この改定率で大きなプラスとなれば、厳しい方向性のサービスについてもマイナス影響は限定的となるかもしれませんし、場合によってはマイナスではなくプラスマイナス0や、微増になる可能性も秘めています。そう言う意味でも年内に決まる全体改定率の結果を注視していきたいと思います。 

 
 

斉藤 正行氏

一般社団法人全国介護事業者連盟 理事長

現場主導による制度改革の実現に向けて介護及び障害福祉事業者による大同団結を目指す横断型(法人種別・サービス種別)の事業者団体

http://kaiziren.or.jp/