次期改定におけるLIFEの見直しは限定的

令和5年11月27日に開催された介護給付費分科会において、科学的介護の推進及び科学的介護情報システム(LIFE)の次期改定における見直しの具体案が示されました。
論点は3つ。1つめは、「科学的介護の推進に向けた入力項目の見直し及びフィードバックの充実について」です。よりデータ収集の精度を高めることと、入力負担の軽減を実現するための具体案として、入力項目について、フィードバックを充実させるために必要な項目を追加するとともに、各加算で重複する項目の選択肢の統一や、必須項目・任意項目の整理を進める方向性が示されました。更には、初回データ提出への猶予期間の設定や、データ提出頻度を3カ月に1回に統一する方向性が示されるとともに、フィードバックについても、いよいよ本格的な分析結果を示していく方向性が示されました。
2つめは、「自立支援・重度化防止を重視した適切な評価の見直しについて」です。具体的には、4つの加算での科学的介護の更なる促進の方向性が示されました。褥瘡の防止によるアウトカム(成果)によって算定可能な施設系サービスの加算である「褥瘡マネジメント加算」について、褥瘡の防止のみならず、既に褥瘡がある利用者が治癒した場合にも算定できる方向性が示されました。同じく、オムツを外すことで算定可能な施設系サービスの加算である「排せつ支援加算」について、尿道カテーテルの使用有無のアウトカムでの算定の方向性が示されました。また、複数サービスで算定可能な「ADL維持等加算」について、現在の複雑な計算式の簡素化の方向性が示されました。施設系サービスの加算であり、医師の指導に基づく自立支援・重度化防止の推進によるケアマネジメントの実践によって算定可能な「自立支援促進加算」について、個別ケアを重視した支援計画による評価項目の見直しの方向性が示されました。
3つめは、「LIFE関連加算の対象となるサービス範囲について」です。注目されていた居宅介護支援事業所や、訪問系サービスへのLIFE関連加算の創設が見送られる方向性が示めされるとともに、2027年改定を見据えて、訪問系サービスにおけるLIFE評価項目の検討と、同一利用者への複数事業所でのLIFE活用の在り方の検討を進めていく方針が示されました。
鳴り物入りで2021年改定において本格導入されたLIFEですが、次期改定において更なる促進や、新たな取組みが多数行われるのではないかと予測をしていましたが、結果として、次期改定においては、ひとまず一旦立ち止まって足場固めを行い、更なる推進に向けた体制構築の改定とする方向性となりました。現在の介護現場での導入状況や、活用状況を踏まえると、本格的な活用が出来ている事業所は極めて限定的であり、数多くの事業所が負担感を感じている状況であり、このような判断に至ったと思います。
しかしながら、これで科学的介護の推進の流れが変わるわけではありません。むしろ、将来の介護現場における科学的介護の実践をスタンダードにしていくためにも、ここでしっかりと足場固めを行う方針であります。事業所の皆さんには改めて科学的介護の推進や、LIFEへの対応や本格活用に向けた準備と取組みを少しでも早く進めていくことを引き続きお薦め致します。合わせて、今後の報酬改定の最終決着について注視していきたいと思います。

斉藤 正行氏
一般社団法人全国介護事業者連盟 理事長
現場主導による制度改革の実現に向けて介護及び障害福祉事業者による大同団結を目指す横断型(法人種別・サービス種別)の事業者団体