令和6年度介護報酬改定の全体改定率が決着

令和6年度報酬改定の全体改定率が決定しました。診療報酬は本体0.88%(薬価マイナス0.96%)となります。介護報酬は1.59%(うち0.98%は処遇改善加算)となります。加えて、処遇改善加算の1本化に伴うプラスや、光熱費の高騰対策などを含めた実質は2.04%となります。ただし、0.98%の処遇改善加算は2年分として割り当てられた予算であり、2年に分けて支給するのか。2年目は別枠での追加対策を行うのか。最終調整が行われているところであり、2年目に別枠となれば、更なるプラスとなります。
2009年改定の過去最高プラスの3.0%に次ぐ、過去2番目に大きなプラス改定となります。また、同時改定において、診療報酬を介護報酬が上回るのは初めてのことであり、異例とも言える改定となります。
介護報酬は前回(令和3年度)1.7%、前回の同時改定となる前々回(平成30年度)は0.54%であり、過去2回を大幅に上回る改定率となりました。それでも、介護現場の厳しい実情や、物価高騰に対する他産業との賃上げの格差の状況を考えると、多くの介護事業者や職員の方々には十分な数字の改定率ではないと感じるかもしれません。しかしながら、厳しい財政事情に加えて、社会保険料負担を引き上げることへの厳しい世論の情勢、更には少子化対策への財源確保に向けた社会報酬費の削減方針が示される大変厳しい条件の中で勝ち得た価値ある改定率となりました。
私が代表を務める全国介護事業者連盟がリーダーシップを発揮し、他の関係団体とも様々な連携、協力の賜物で勝ち得た数字です。先週時点では財務省からの最後通告は1%程度でありました。そこから更に倍を超える数字となったことには安堵しています。
この全体改定率の決定とともに、令和5年12月18日開催の介護給付費分科会において、「令和6年度介護報酬改定に関する審議報告」が取りまとめられました。今後は、審議報告に基づき、全体改定率から各サービスおよび各加算への単位数の割り振りの調整が行われていくことになります。合わせて、加算や見直しの中身の詳細についての最終調整が行われることになります。各サービスへの割り振りにおいては、11月10日に公表された「令和5年度介護事業経営実態調査」で示された収支差率が参考データになります。平均2.4%の収支差率とのプラスマイナスが一つの目安になってくると思います。もちろん収支差率だけの単純数字の比較で全てが決まるわけではありません。
介護給付費分科会において方針が示されていた、サ高住や住宅型有料老人ホーム等の集合住宅に対する更なる減算の方針や、小多機・看多機・定期巡回の総合マネジメント体制強化加算の減額方針、訪問看護のリハビリ単位数など、マイナス圧力の強まっていたサービスについても、マイナス幅を弱める原資が少し出来たことにもなります。いずれにせよ、今後の最終調整に向けた動静と、最終結果の発表に注目していきたいと思います。

斉藤 正行氏
一般社団法人全国介護事業者連盟 理事長
現場主導による制度改革の実現に向けて介護及び障害福祉事業者による大同団結を目指す横断型(法人種別・サービス種別)の事業者団体