令和6年度介護報酬改定に関する審議報告が
取りまとめられる

令和5年12月19日に、令和6年度報酬改定に関する審議報告が取りまとめられました。全体改定率が決定しました。翌20日には全体改定率が1.59%(うち、処遇改善が0.98%)で決着し、いよいよこれから、各サービス・加算への単位数の割り振りと、見直し項目内容の最終取りまとめが行われることになります。
また、改定実施時期についても、原則4月改定となり、訪問看護、訪問リハビリテーション、通所リハビリテーション、居宅療養管理指導の4サービスのみ6月改定となります。加えて、処遇改善関連加算が1本化される新しい処遇改善加算についても6月改定となることが決まりました。改定実施時期がサービスや加算によって異なることは過去初めてのことであり、事業者は実施時期の違いを正しく把握し、対応準備を進めていかなければなりません。
取りまとめられた審議報告の中身についても確認していきたいと思いますが、4つの基本的な視点が示されており、そのポイントとともに整理していきたいと思います。まず1つ目の視点は、『地域包括ケアシステムの深化・推進』です。同時改定であり、「医療と介護の連携の推進」「看取りへの対応強化」や「感染症や災害への対応力向上」「認知症対応力向上」「質の高い公正なケアマネジメント」などがポイントとなります。2つ目の視点は、『自立支援・重度化防止に向けた対応』です。今後の制度改革の要ともなるテーマであり、「リハビリテーション・機能訓練、口腔、栄養の一体的取組等」「自立支援・重度化防止に係る取組の推進」「LIFEを活用した質の高い介護」がポイントとなります。3つ目の視点は、『良質な介護サービスの効率的な提供に向けた働きやすい職場づくり』です。人口減少・労働人口減少社会での介護人材確保に向けた極めて困難な課題解決に向けたテーマであり、「介護職員の処遇改善」「生産性の向上等を通じた働きやすい職場環境づくり」「効率的なサービス提供の推進」がポイントとなります。4つ目の視点は、『制度の安定性・持続可能性の確保』です。今回はプラス改定を確保できましたが、濃淡をつけたサービス・加算への割り振りへと繋がるテーマであり、「評価の適正化・重点化」「報酬の整理・簡素化」がポイントとなります。
令和6年度介護報酬改定の大きな方向性と、各サービスの見直しの概略については、これで全てが固まったことになります。全体改定率のプラスは確保されましたが、将来に備えた大きな改革へと繋がる第一歩の報酬改定となります。介護事業者の皆さんは、次期改定は大変革に向けた準備に備える3年間であると位置づけて、改定動向を読み解き、現場の経営・運営の変革、介護の在り方を見直していくことが大切となります。

斉藤 正行氏
一般社団法人全国介護事業者連盟 理事長
現場主導による制度改革の実現に向けて介護及び障害福祉事業者による大同団結を目指す横断型(法人種別・サービス種別)の事業者団体