令和6年度介護報酬改定おける通所介護の見直しポイントと影響について

2024.01.12

新年あけましておめでとうございます。本年も本コラムにてどうぞよろしくお願い致します。 

新年より「令和6年能登半島地震」が発生し、日増しに被害が拡大している状況に誰もが大変心を痛めている状況にあると思います。被害を受けられた全ての方に心よりお見舞い申し上げるとともに、災害支援に向けて、可能な支援を行ってまいりたいと思います。 

 

さて、本題に入りたいと思います。令和5年12月19日に「令和6年度報酬改定に関する審議報告」が取りまとめられました。また同月20日に全体改定率も閣僚折衝を経て正式に決定致しました。これを受けて、年明けの最終確定に向けて、各サービス・加算への単位数の割り振りと、各サービスの具体的な見直し内容を詰めていくことになります。 今回はその中で、通所介護及び地域密着型通所介護の見直しポイントについて、改めて整理するとともに、事業者が備えるべき心構えをお伝えしたいと思います。 

 

通所介護に限定した見直し項目は6つとなります。 

1.3%加算・規模区分特例の見直し 

2.認知症加算の見直し 

3.入浴介助加算の見直し 

4.個別機能訓練加算の見直し 

5.豪雪地帯等における通所介護費等の所要時間の取扱いの明確化 

6.送迎に係る取扱いの明確化 

 

「3%加算・規模区分特例の見直し」は、新型コロナの5類移行を受けて新型コロナによる特例措置は廃止するとともに、災害や新たな感染症対応への特例として制度は残ることになります。

「認知症加算の見直し」は、算定要件に、個別の事例検討や、認知症ケアに関する研修・会議等の定期開催を求めるとともに、利用者における認知症の方の割合が緩和されることになります。

「入浴介助加算の見直し」は、加算Ⅰの算定要件に、職員に対する研修等の開催を求めることとし、加算Ⅱの算定要件は、医師等による利用者宅への訪問指導を、介護職の訪問に対してオンラインでの医師等による指導で算定可能と要件を緩和するとともに、施設の浴室環境は個浴ではない浴室環境でも算定可能な要件が改めて明確化されます。

「個別機能訓練加算の見直し」は、加算Ⅰのロにおける機能訓練指導員の配置要件を緩和するとともに、単位数の削減が行われることになります。

「豪雪地帯等における通所介護費等の所要時間の取扱いの明確化」は、送迎時において、天候等の変更による到着時間の遅れ等について考慮して通所介護費の算定時間を取扱うことが明確化されます。

「送迎に係る取扱いの明確化」は、送迎先の定義の見直しとともに、他の介護・障害福祉事業所との送迎の連携を可能とすることが明確化されます。 

 

この6項目に加えて、他サービスとも共通する見直し項目の中で、通所介護に影響の大きな見直し項目として、「ADL維持等加算の見直し」は、アウトカム評価をいっそう充実させる観点から、ADL利得の計算方法の簡素化や、加算Ⅱの算定要件の緩和が行われます。また、「科学的介護推進体制加算の見直し」は、LIFEの活用促進の観点から、入力負担の軽減や、データ提出時期・頻度の統一化が行われます。 

その他にも、処遇改善関連加算の1本化、BCP未作成に対する減算の導入、高齢者虐待防止の推進、身体拘束等の適正化の推進、テレワークの取扱いの明確化、管理者の兼務範囲の明確化、両立支援への配慮、技能実習生等の配置要件緩和、地域区分の見直しなどが行われることになります。 

今回の令和6年度介護報酬改定の審議報告を踏まえると、6年に1度の同時改定ではありますが、事業者への影響度については、前回改定(令和3年度)より限定的であると思います。しかながら、だからといって、事業者が安心感を得て、変革への意識が欠如してしまうことは絶対に避けなければなりません。前回改定で示された従来の介護保険制度とは異なる新しい概念、「科学的介護」「自立支援・重度化防止」「生産性向上」といったテーマに基づく改革を、確実に現場に浸透させるための令和6年度改定であるとの認識を持たなければなりません。事業者は、運営する通所介護の専門性を高める努力を行い、コンセプトや事業特性に応じて、制度改革の方向性を踏まえた対応が求められることとなります。 

 
 

斉藤 正行氏

一般社団法人全国介護事業者連盟 理事長

現場主導による制度改革の実現に向けて介護及び障害福祉事業者による大同団結を目指す横断型(法人種別・サービス種別)の事業者団体

http://kaiziren.or.jp/