令和6年度介護報酬改定における改定項目の全体概要

令和6年1月22日に開催された介護給付費分科会において「令和6年度介護報酬改定における改定事項」が示され、全サービス・加算の単位数及び、見直し項目が了承されました。前回お伝えした通り、全体改定率1.59%(処遇改善0.98%、その他0.61%)に、かなり濃淡をつけた割り振りとなりました。
ほとんど全てのサービス種別の基本報酬はプラスとなっており、新たな加算創設や、既存加算の拡充など、介護事業者にとっては、総じて歓迎できる改定でありますが、とりわけ、「特別養護老人ホーム」「老人保健施設」は大きな基本報酬のプラスとなりました。しかしながら、「訪問介護」「定期巡回・随時対応型訪問介護看護」「夜間対応型訪問介護」「訪問リハビリテーション(予防のみ)」の4サービスは、基本報酬のマイナスとなりました。全国3万6000事業所の訪問介護のマイナスには、公表後、業界内外より懸念の声が多数上がっています。
今回は、単位数のみならず、見直しの中身について確認していきたいと思いますが、審議報告において示された4つの基本的な視点と、その他項目を加えたポイントを整理していきたいと思います。まず1つ目の視点は、『地域包括ケアシステムの深化・推進』です。「医療と介護の連携の推進」「看取りへの対応強化」や「認知症対応力向上」がポイントであり、施設、在宅ともに、医療連携、看取り、認知症関連の加算の拡充や、新しい加算の創設が行われました。また、「感染症や災害への対応力向上」「高齢者虐待防止の推進」においては、BCPの未策定、虐待防止への取組が行われていない事業所は減算となります。「質の高い公正中立なケアマネジメント」では、居宅介護支援における特定事業所加算の見直し、介護予防の対応の見直し、オンラインでのモニタリグ対応が可能となります。「地域の実情に応じた柔軟かつ効率的な取組」では、小多機・看多機・定期巡回における総合マネジメント体制強化加算の見直しが行われ、3サービスにとっては大変重要です。「福祉用具貸与・特定福祉用具販売の見直し」では、杖・歩行器・スロープの販売を主とした選択制への移行となります。2つ目の視点は、『自立支援・重度化防止に向けた対応』です。今後の制度改革の要ともなるテーマであり、「リハビリテーション・機能訓練、口腔、栄養の一体的取組等」では、計画書等の一体化の推進、口腔機能向上や、栄養改善に向けた加算の拡充と、新しい加算の創設が複数のサービスで行われました。「自立支援・重度化防止に係る取組の推進」では、通所介護における入浴介助加算の見直しが行われました。「LIFEを活用した質の高い介護」では、LIFEの入力の簡素化やフィードバックの充実の方向性が示されるとともに、アウトカム評価の更なる拡充が行われました。3つ目の視点は、『良質な介護サービスの効率的な提供に向けた働きやすい職場づくり』です。人口減少・労働人口減少社会での介護人材確保に向けた極めて困難な課題解決に向けたテーマであり、「介護職員の処遇改善」では、加算の1本化と単位数の大幅な拡充となりました。「生産性の向上等を通じた働きやすい職場環境づくり」では、施設・居住系サービスにおいてDX推進による新しい加算の創設や、特定施設における人員配置基準の特例的な見直しが行われました。「効率的なサービス提供の推進」では、居宅介護支援における逓減制の更なる推進が行われました。4つ目の視点は、『制度の安定性・持続可能性の確保』です。「評価の適正化・重点化」では、集合住宅における訪問介護の減算の拡大、短期入所施設における長期利用での減算、居宅介護支援にも同一建物減算が適用されることになりました。最後にその他項目として、施設における基準費用額の増額や、通所系サービスにおける共同送迎の明確化などが行われました。
以上が、令和6年度介護報酬改定の全体単位数と見直し項目の概要であり、次週からは、各サービスの見直し項目について、それぞれ解説を進めていきたいと思いますので、ご注目ください。

斉藤 正行氏
一般社団法人全国介護事業者連盟 理事長
現場主導による制度改革の実現に向けて介護及び障害福祉事業者による大同団結を目指す横断型(法人種別・サービス種別)の事業者団体