令和6年度 介護報酬改定における通所介護の見直し解説

令和6年1月22日に開催された介護給付費分科会において「令和6年度介護報酬改定における改定事項」が示され、全サービス・加算の単位数及び、見直し項目が示されました。今回より、主要サービスの見直し内容について順次解説していきたいと思います。まずは、通所介護を確認していきたいと思います。
全体改定率は+1.59%であり、処遇改善を除いた事業者への割り振りは+0.61%となります。通所介護の基本報酬単位は、3から6単位増の+0.48%。地域密着型通所介護は、3から4単位増の+0.34%となりました。平均0.61%より少し低い上げ幅であり、微増の改定と言えます。見直し項目については、全15項目となります。他サービスとも共通する見直し項目は、「処遇改善加算の1本化」「科学的介護推進体制の見直し」「ADL維持等加算の見直し」「BCP未作成に対する減算の導入」「高齢者虐待防止の推進」「身体拘束等の適正化の推進」「テレワークの取扱いの明確化」「技能実習生等の配置要件緩和」等です。
通所介護に限定した見直し項目は、今回5つです。
1.認知症加算の見直し
2.入浴介助加算の見直し
3.個別機能訓練加算の見直し
4.豪雪地帯等における通所介護費等の所要時間の取扱いの明確化
5.送迎に係る取扱いの明確化
「認知症加算の見直し」は、単位数は変わらないものの、算定要件が緩和され、算定が、いくぶん容易になります。「入浴介助加算の見直し」は、同じく単位数は変わらないものの、加算Ⅰの算定要件に、職員に対する研修等の開催が求められることなり要件がいくぶん厳しくなります。加算Ⅱの算定要件は、医師等による利用者宅への訪問指導を、介護職の訪問による医師等のオンライン指導で算定可能と要件が緩和され、施設の浴室環境は個浴ではない浴室環境でも算定可能な要件の明確化が行われます。「個別機能訓練加算の見直し」は、今回最も影響の大きい見直しであり、加算Ⅰのロにおける機能訓練指導員の配置要件を緩和するとともに、9単位減となり、算定している事業者にとっては、大きなマイナス影響もあり得ます。「豪雪地帯等における通所介護費等の所要時間の取扱いの明確化」は、送迎時において、天候等の変更による到着時間の遅れ等について考慮して通所介護費の算定時間を取扱うことが明確化されます。「送迎に係る取扱いの明確化」は、送迎先の定義の見直しとともに、他の介護・障害福祉事業所との送迎の連携を可能とすることが明確化されます。
以上の今回の令和6年度介護報酬改定の見直し項目は、同時改定ではあるものの、前回改定より変革は限定的であります。しかしながら、前回改定で示された従来の介護保険制度とは異なる新しい概念、「科学的介護」「自立支援・重度化防止」「生産性向上」といったテーマに基づく改革を、確実に現場に浸透させるための令和6年度改定であるとの認識を持つことが大切であります。

斉藤 正行氏
一般社団法人全国介護事業者連盟 理事長
現場主導による制度改革の実現に向けて介護及び障害福祉事業者による大同団結を目指す横断型(法人種別・サービス種別)の事業者団体