令和6年度介護報酬改定における訪問看護の見直し解説

「令和6年度介護報酬改定における改定事項」の解説。今回は、訪問看護の見直し内容について解説していきたいと思います。
全体改定率は+1.59%であり、処遇改善を除いた事業者への割り振りは+0.61%となります。訪問看護の基本報酬単位は、1から3単位増の+0.26%。訪問系の4サービスがマイナス改定となる中で僅かながらもプラスが確保されました。懸念されていた理学療法士等のサービスも1単位増となりました。しかしながら、看護職員による訪問回数を超える理学療法士等の訪問の場合や、「緊急時訪問看護加算」「特別管理加算」「看護体制強化加算」をいずれも算定していない場合には、8単位の減算となります。相当割合の訪問看護事業所が減算に該当する予測となり、実質的なマイナス改定とも言える見直しとなりました。
見直し項目については、訪問看護は15項目となり、他サービスと共通する見直し項目は、「BCP未作成に対する減算の導入」「高齢者虐待防止の推進」「身体拘束等の適正化の推進」「テレワークの取扱いの明確化」「特別地域加算の見直し」等となります。訪問系サービス及び、訪問看護に限定した見直し項目は、今回10となります。今回の改定は診療報酬との同時改定であり、医療サービスである訪問看護は、比較的見直し項目の多いサービスの1つとなりました。
中でも影響の大きい見直し項目を7つ示したいと思います。
1.専門管理加算の創設
2.退院当日の看護師による訪問の推進
3.ターミナルケア加算の見直し
4.遠隔死亡診断補助加算の創設
5.口腔連携強化加算の創設
6.緊急時訪問看護加算の見直し
7.理学療法士等による評価の見直し
「専門管理加算の創設」は、特定行為研修を修了した看護師が訪問した際に算定できる新たな加算が創設されます。「退院当日の看護師による訪問の推進」は、初回加算において病院等からの退所日に訪問を行う際、加算の上位区分が創設されます。「ターミナルケア加算の見直し」は、看取りについてより重要視する観点から、単位数が500単位引き上げられます。「遠隔死亡診断補助加算の創設」は、離島等で生活されている利用者が亡くなられた際の死亡診断に際して、オンライン機器を用いたサポートを行う際に算定できる新たな加算が創設されます。「口腔連携強化加算の創設」は、歯科医療機関や介護支援専門員との連携や、情報提供による口腔管理を行うことで算定可能な新たな加算が創設されます。「緊急時訪問看護加算の見直し」は、24時間対応を行う看護師の負担軽減に資する十分な業務管理体制の整備が行われた際、加算の上位区分が創設されます。「理学療法士等による評価の見直し」は、上述した理学療法士等による訪問回数に応じた減算措置となります。
以上の今回の令和6年度介護報酬改定の見直し項目は、訪問看護にとっては減算措置の厳しい側面もありますが、同時に新たな加算創設も多数ありますので、算定を進めていくことは重要な対策の1つとなります。

斉藤 正行氏
一般社団法人全国介護事業者連盟 理事長
現場主導による制度改革の実現に向けて介護及び障害福祉事業者による大同団結を目指す横断型(法人種別・サービス種別)の事業者団体