令和6年度介護報酬改定における居宅介護支援の見直し解説

「令和6年度介護報酬改定における改定事項」の解説。今回は、居宅介護支援の見直し内容について解説していきたいと思います。
全体改定率は+1.59%であり、処遇改善を除いた事業者への割り振りは+0.61%となります。居宅介護支援の基本報酬単位は、居宅介護支援(ⅰ)のa(要介護1又は2)が10単位増、b(要介護3,4又は5)が13単位増の+0.92%。平均+0.61%を上回る水準ではありますが、包括払いである居宅介護支援においての10単位増は利用者1人当たり月額100円程度の増収となりますので、プラス影響は限定的であります。そして今回も期待された処遇改善加算の創設は実現しなかったため、居宅介護支援のケアマネジャーの処遇改善策は別途検討していかなければなりません。介護職との平均給与の差は僅かとなってきており、業務過多の中、ケアマネジャーの成り手不足の解決は大きな課題の1つであり、今回の改定内容を踏まえた新たな加算の算定や、1人当たりケアマネジャーの担当件数を引き上げるなどの対応を検討し、処遇改善を図っていくことが大切となります。
見直し項目について、居宅介護支援は17項目となり、他サービスと共通する見直し項目は、「BCP未作成に対する減算の導入」「高齢者虐待防止の推進」「身体拘束等の適正化の推進」「テレワークの取扱いの明確化」「特別地域加算の見直し」等となります。居宅介護支援に限定した見直し項目は、今回11となります。今回の改定は居宅介護支援にとっては、他サービスと比べて、比較的見直し項目の多いサービスの1つとなりました。
中でも影響の大きい見直し項目を8つ示したいと思います。
1.特定事業所加算の見直し
2.介護予防支援を行う場合の取扱い
3.他のサービス事業所との連携によるモニタリング
4.入院時情報連携加算の見直し
5.通院時情報連携加算の見直し
6.公正中立性の確保のための取組の見直し
7.介護支援専門員1人当たりの取扱い件数
8.同一建物に居住する利用者へのケアマネジメント
「特定事業所加算の見直し」は、多様化・複雑化する課題解決に向け、ヤングケアラー・障害者・生活困窮者・難病患者等の他制度に関する研修等への参加が要件に加えられた上で、単位数が引き上げられます。また事務負担の軽減の観点から運営基準減算に係る要件が削除されます。「介護予防支援を行う場合の取扱い」は、4月より居宅介護支援も市町村からの指定を受けて介護予防支援を実施できるようになることから、要件を見直し、単位数が引き上げられます。「他のサービス事業所との連携によるモニタリグ」は、オンラインでのモニタリグが可能となり、業務の効率化が図られることになります。「入院時情報連携加算の見直し」は、利用者の入院当日に情報連携を行った際に算定可能な上位区分が創設されます。「通院時情報連携加算の見直し」は、単位数は変わりませんが、歯科医との情報連携でも算定可能となります。「公正中立性の確保のための取組の見直し」は、前回改定で義務化された訪問介護・通所介護・福祉用具貸与のサービス割合の説明等が、努力義務へと見直されます。「介護支援専門員1人当たりの取扱い件数」は、逓減制が更に見直されることとなり、居宅介護支援費Ⅰについて、ケアプランデータ連携システムの活用を前提に50件が上限となります。更に介護予防支援は3件で1件カウントとなります。「同一建物に居住する利用者へのケアマネジメント」は、訪問介護や通所介護と同様に、居宅介護支援においても減算が適用されることになります。
以上の今回の令和6年度介護報酬改定の見直し項目は、居宅介護支援にとっては見直しの多い内容となります。質の高いケアマネジメントの実現とともに、生産性向上・効率化の実現が求められることとなります。

斉藤 正行氏
一般社団法人全国介護事業者連盟 理事長
現場主導による制度改革の実現に向けて介護及び障害福祉事業者による大同団結を目指す横断型(法人種別・サービス種別)の事業者団体