令和6年度介護報酬改定における小多機・定期巡回の見直し解説

「令和6年度介護報酬改定における改定事項」の解説。今回は、小規模多機能型居宅介護及び、定期巡回・随時対応型訪問介護看護の見直し内容について解説していきたいと思います。
全体改定率は+1.59%であり、処遇改善を除いた事業者への割り振りは+0.61%となります。小規模多機能型居宅介護の基本報酬単位は+0.34%と微増にとどまっています。定期巡回・随時対応型訪問介護看護の基本報酬単位は-4.4%となる大幅な減少となっています。訪問系4サービスがマイナスとなり、最もマイナス幅の多いサービスとなりました。背景には、最新の経営実態調査における収支差率が11.0%と収益性が高いとの調査結果が公表されたことにあります。訪問介護のマイナスとともに、業界に大きな波紋を呼んでいます。訪問介護と同様に、新しい処遇改善加算の算定率が最大値と設定されたことで、大幅な処遇改善を行い人材不足への対策としていかなければなりません。
見直し項目については、小規模多機能型居宅介護は14項目、定期巡回・随時対応型訪問介護看護は15項目となり、両サービスに共通する他サービスと共通する見直し項目は、「BCP未作成に対する減算の導入」「高齢者虐待防止の推進」「身体拘束等の適正化の推進」「処遇改善加算の1本化」「テレワークの取扱いの明確化」「特別地域加算の見直し」等となります。小規模多機能型居宅介護は、加えて、「科学的介護推進体制加算の見直し」「生産性向上推進体制加算の創設」「外国人材の人員配置要件の見直し」となり、定期巡回・随時対応型訪問介護看護は、加えて、「認知症専門ケア加算の見直し」「口腔連携強化加算の創設」「緊急時訪問看護加算の見直し」等となります。
両サービスに共通し、看護小規模多機能型居宅介護も含めて見直された最も大きな影響となるのが、「総合マネジメント体制強化加算の見直し」です。従来月1000単位であり、区分支給限度額の外に置かれている加算です。今回の改定にあたり、介護給付費分科会では、区分支給限度額の中に置くことも一時は検討されましたが、最終的には従来通りとなりました。しかしながら、単位数は従来通りの対応を継続した場合には200単位マイナスの800単位へと大幅な減額となります。一方で、地域連携、共生型社会の実現、社会参加を促す取組みなどを行うことによって200単位プラスとなる1200単位の新たな区分が創設されることになりました。両サービスにとっては、この新設された区分を算定できるかどうかが事業にとっては大変大きな影響となります。
その他、小規模多機能型居宅介護の固有見直し項目には、「認知症加算の見直し」があり、専門的研修修了者の配置等によって算定可能な上位区分が創設されています。また、「管理者の配置基準の見直し」では、管理者の兼務要件が大きく緩和されることになりました。定期巡回・随時対応型訪問介護看護の固有見直し項目においては、「集約化範囲の見直し」によって、都道府県を超えた事業所間連携が認められることとなり、オペレーターの効率化が図れることとなります。
以上、今回の令和6年度介護報酬改定の見直し項目は、繰り返しとなりますが、両サービスにとっては「総合マネジメン体制加強化加算」の上位区分への対応が最も大きなポイントであり、定期巡回・随時対応型訪問介護看護においては、大幅なマイナス改定に対して、必要な加算算定を全て行う体制を構築するとともに、生産性の向上、効率化がいっそう求められることとなります。

斉藤 正行氏
一般社団法人全国介護事業者連盟 理事長
現場主導による制度改革の実現に向けて介護及び障害福祉事業者による大同団結を目指す横断型(法人種別・サービス種別)の事業者団体