令和6度介護報酬改定における有料老人ホーム(介護付き・住宅型)の見直し解説

2024.03.15

「令和6年度介護報酬改定における改定事項」の解説。今回有料老人ホーム(介護付き・住宅型)の見直し内容について解説していきたいと思います。 

全体改定率は+1.59%であり、処遇改善を除いた事業者への割り振りは+0.61%となります。介護付き有料老人ホーム(特定施設入居者生活介護)の基本報酬単位は+0.75平均以上の上げ幅であるものの微増と言えます住宅型有料老人ホームは外部サービスの組み合わせによって異なりますので、一概には示せませんが、訪問介護は基本報酬単位が-2.0%と大きな下げ幅となっていること周知の通りです。 

見直し項目について、介護付き有料老人ホーム(特定施設入居者生活介護)は19項目となり比較的見直し項目の多いサービス分類となりますが、他サービスと共通する見直し項目が多くなります。例えばBCP未作成に対する減算の導入」「高齢者虐待防止の推進」「身体拘束等の適正化の推進「科学的介護推進体制加算の見直し」「ADL維持等加算の見直し」「処遇改善加算の1本化」「テレワークの取扱いの明確」「特別地域加算の見直しや、更には施設系・居住系サービス共通の見直し項目となる生産性向上推進体制加算の創設」「協力医療機関連携加算の創設」「退所時情報提供加算の見直し」「高齢者施設等感染対策向上加算の創設」「外国人材の人員配置要件の見直し」が行われます。特養などと同様の加算創設や見直しが多数行われている背景には、特定施設に、特養などの施設同様の重度対応の役割が求められ始めていることを意味します。 

 

介護付き有料老人ホーム(特定施設入居者生活介護)固有の見直し項目は3項目となり限定的であります。 

1.夜間看護体制加算見直し 

2.入居継続支援加算の見直し 

3.口腔衛生管理の強化 

 

「夜間看護体制加算見直し」は、宿直含めた夜間帯の看護師配置によって算定可能な上位区分が創設されることになります。「入居継続支援加算の見直し」は、尿道カテーテル、在宅酸素、インスリン注射の対応が必要な方も対象に加えられることになります。「口腔衛生管理の強化」は、全ての特定施設において口腔衛生管理体制を確保することを求めることから、3年間の猶予期間の後、口腔衛生管理体制加算を廃止し基本サービスに組み込まれることになります。事業者の収益としてはマイナス影響となりますが、今後に向けて施設にとっては向き合わなければならないテーマの1つとなります。これらの見直し内容は、特定施設に、これまで以上に重度者対応、看取り対応が求められていることを意味しています。 

住宅型有料老人ホームは前述の通り、外部サービスの組み合わせによって、それぞれの在宅介護サービスの見直し項目が該当することになりますが、一番のポイントは、「訪問介護における同一建物減算の更なる拡大」についてです。従来の10%減算、15%減算に加えて、在宅への訪問を利用者の1割以上行っていなければ12%の減算ルールが創設されることになりました。該当する事業者にとっては訪問介護の基本報酬単位のマイナスと合わせたダブルの影響を受けることとなります。 

以上の今回の令和6年度介護報酬改定の見直し項目は介護付き有料老人ホーム(特定施設入居者生活介護)にとっては、重度者対応、医療連携、看取りへの対応強化がいっそう求められることとなり、住宅型有料老人ホームにとっては、集合住宅のみならず、地域の在宅への訪問体制の確立が求められることとなります。 

 
 

斉藤 正行氏

一般社団法人全国介護事業者連盟 理事長

現場主導による制度改革の実現に向けて介護及び障害福祉事業者による大同団結を目指す横断型(法人種別・サービス種別)の事業者団体

http://kaiziren.or.jp/