令和6年度介護報酬改定における福祉用具貸与・福祉用具販売の見直し解説

「令和6年度介護報酬改定における改定事項」の解説。今回は、福祉用具貸与(レンタル)・特定福祉用具販売の見直し内容について解説していきたいと思います。全体改定率は+1.59%であり、処遇改善を除いた事業者への割り振りは+0.61%となります。福祉用具貸与・特定福祉用具販売は、報酬単位が設定されているわけではありませんし、処遇改善加算についても加算が存在しないため、改定率による影響は特にありません。
見直し項目について、福祉用具貸与は10項目、特定福祉用具販売は4項目となります。他サービスと共通する見直し項目の中で「身体拘束等の適正化」「テレワークの取扱い明確化」は両サービスに共通した見直しであり、加えて福祉用具貸与では他サービスと共通する見直し項目に「BCP未作成に対する減算の導入」「高齢者虐待防止の推進」等があります。
今回、福祉用具貸与・特定福祉用具販売の固有見直し項目の中で最大のポイントとなるのは「福祉用具の貸与と販売の選択制の導入」です。従来は貸与を原則としていた固定用スロープ、歩行器、単点杖(松葉づえを除く)及び多点杖について、貸与のみならず販売の選択肢が加えられる選択制が導入されます。そのため、介護支援専門員はプラン策定において、医師等の専門家の意見を確認の上で提案することが求められます。また、福祉用具貸与の際には、6ヶ月に1度のモニタリグが必要となります。福祉用具貸与事業所にとっては、大変影響の大きな見直しとなります。
加えて、両サービス共通の見直し項目にはあり方検討会を踏まえて、福祉用具の安全利用の促進、福祉用具に係る事故情報のインターネットでの公表、福祉用具専門相談員指定講習カリキュラムの見直し、福祉用用具の選定判断基準の見直しや、自治体向けの点検マニュアルの作成等が行われます。
その他、福祉用具貸与における固有の見直し項目が2点あります。
1.モニタリグ実施時期の明確化
2.モニタリング結果の記録及び介護支援専門員への交付
「モニタリング実施時期の明確化」は、サービスの質の向上を目的とし、従来は明確化されていなかった福祉用具貸与計画に、モニタリング実施時期を記載することが求められます。「モニタリグ結果の記録及び介護支援専門員への交付」は、適宜・適切な利用、安全確保の観点から、福祉用具専門相談員がモニタリグの結果を記録し、その記録を介護支援専門員へ交付することが求められます。
以上の今回の令和6年度介護報酬改定の見直し項目は、福祉用具貸与・特定福祉用具販売にとっても大きな影響の生じる内容となりました。とりわけ、貸与と販売の選択制は重要でありますが、サービスの質向上と安全性の確保に向けた取組が今後も益々重要視されることになります。中でも福祉用具の活用に伴う利用者の重度化への影響は従前より指摘されており、今後、自立支援・重度化防止の観点からも制度改革が行われることも予測されます。福祉用具貸与・特定福祉用具販売事業者にとっては、改めて運営のあり方が問われることとなります。

斉藤 正行氏
一般社団法人全国介護事業者連盟 理事長
現場主導による制度改革の実現に向けて介護及び障害福祉事業者による大同団結を目指す横断型(法人種別・サービス種別)の事業者団体