介護現場における外国人活用の最新動向について

2024.04.26

介護現場における外国人材活用を取り巻く環境に大きな変化の兆しが見られています。最新の動向について整理してお伝えしたいと思います。 

介護現場における外国人材活用では4つの介護固有の在留資格制度があります。【EPA(経済連携協定)】【在留資格「介護」】【技能実習】【特定技能】です。その他にも、「留学資格」や、日系人による「定住者」などの在留資格による活用も可能となります。介護現場における外国人材活用においては、【技能実習】【特定技能】の2つの制度による受入れ人数が多く、それぞれ1万人を超えており、今後も受入れ人数の拡大が見込まれます。 

技能実習制度は、平成2810月に対象職種に介護が加えられ、3年を目途に必要に応じた見直しを行うこととされていました。しかしながら、その後コロナ禍の状況の中で、外国人が十分に活用出来ない状況が続いておりました。昨年5月に、新型コロナが感染症法上5類へと分類され、本格的な外国人活用に向けた機運が高まってきたことから、具体的な見直しの議論が行われることとなりました。 

また、一昨年末政府が設置た「技能実習制度及び特定技能制度の在り方に関する有識者会議」による議論を経て、技能実習制度は廃止となり、新たに「育成就労制度」が創設されることとなります。従来の研修目的のみならず就労目的も加えられることとなり、最大のポイントは就労開始から1年・2年を目安に転籍が認められることとなります。介護固有要件の見直し議論にも大きな影響を及ぼします。 

そのような状況の中、令和5724日に「第1回外国人介護人材の業務の在り方に関する検討会」が開催され、技能実習制度及び、特定技能制度における介護固有要件の見直しに向けた議論が開始され、令和64月現在で6回の検討会が開催されています。私自身も全国介護事業者連盟を代表し委員として検討会の議論に参加しています。 

検討会では、3つの検討項目が示されました。①訪問系サービスなどへの従事について、具体的には「訪問系サービスなどについては、技能実習「介護」、特定技能「介護」等の外国人介護人材の従事が認められていない。これらの施設における外国人介護人材の受入について、どう考えるか。」②事業所開設後3年要件について、具体的には「技能実習「介護」では、経営が一定程度安定している事業所として設立後3年を経過している事業所が対象となっているが、これをどう考えるか。」③技能実習「介護」等の人員配置基準について、具体的には技能実習「介護」等において、就労開始後6ヶ月を経過した者について、介護技能や業務に必要な日本語能力がある程度向上することなどの理由により、介護施設の人員配置基準に算定しているが、その取扱いについてどう考えるか。 

その後の検討会の議論を経て、③技能実習「介護」等の人材配置基準については、令和6年度介護報酬改定において、就労開始日より配置基準に認められることが正式に決定しました。 

また、①訪問系サービスなどへの従事については、特定技能を先行して、訪問入浴介護における活用と、訪問介護、定期巡回・随時対応型訪問介護看護、夜間対応型訪問介護については、初任者研修の受講を前提として、研修の実施やサービス提供責任者等によるOJTの実施などを要件として認める方向性が示されています。まだ、正式な決定事項ではありませんが、今年度中での実現が予測される状況になりました。 

今後、外国人材活用に向けた制度議論が加速していくとともに、介護現場における活用もいっそう促進されることと思います。将来の更なる人手不足を見据えて、外国人材の活用に向けた受入れ準備を進めていくことが求められます。 

 

斉藤 正行氏

一般社団法人全国介護事業者連盟 理事長

現場主導による制度改革の実現に向けて介護及び障害福祉事業者による大同団結を目指す横断型(法人種別・サービス種別)の事業者団体

http://kaiziren.or.jp/