財務省による要介護1と2の保険外しなど2027年法改正への提言

財務省より4月16日に審議会(財政制度等審議会)が開かれ、社会保障をテーマとした意見提言が行われました。特別目新しいメニューがあるわけではありませんが、濃淡のついた提言内容の中には、何としても3年後の法改正・報酬改定に向けて実現させるべきであるとの財務省の強い決意を感じ取ることのできる厳しい内容がいくつか含まれています。今回の介護に対する提言内容は大きく9つです。
1.ICT機器を活用した特養・通所介護等の人員配置基準の柔軟化
2.経営の協働化・大規模化の推進
3.集合住宅(サ高住・住宅型有老等)におけるサービス提供の在り方
4.介護保険外サービスの柔軟な運用。ローカルルールの確認
5.人材紹介会社に対する規制強化
6.要介護1と2の介護保険外し
7.ケアプラン作成の利用者負担の導入
8.利用者の2割負担の対象拡大
9.老健等の多床室の室料負担の見直し
今回は、この9つの提言の中で、2027年介護保険法改正における今後の大きな論点になると予測される3つの内容について深堀して確認したいと思います。
まず、法改正に関する1つ目は、「6.要介護1と2の介護保険外し」です。財務省による具体的な改革の方向性(案)は、①軽度者(要介護1・2)に対する訪問介護・通所介護について地域支援事業へ移行すること。②段階的に、生活援助サービスをはじめ、地域の実情に合わせた効率的な提供を可能にすべきである。と示されています。長年に亘って財務省より提言され続けている内容でもあり、介護保険部会において次期法改正までに再び議論を行う方針がすでに示されており、次回議論の大きな焦点の1つとなります。
ただし、流石に一足飛びに訪問介護や通所介護の要介護1と2を総合事業への移管は非現実的であり、現状のルール化で実現されれば、ほとんどの事業者の事業継続が困難となる可能性すらあり、介護現場からは大反対の声があがっています。まずは、訪問介護における生活援助を先行して総合事業への移管が議論の対象になると思います。しかしながら、生活援助=専門的な介護が不要なわけではありません。また、身体介護のみが介護保険に残った場合には、併用ルールを定める必要もあり、議論すべきポイントが多数あります。いずれにせよ、この問題は、まずは自治体裁量にルールの大部分を委ねている現行の総合事業の在り方を今一度見つめ直し、事業継続が可能なルール作りにならない限り、事業者の理解を得ることは出来ません。加えて、地域に大勢の介護難民を生み出すことに繋がりかねず、慎重な議論が求められます。
2つ目は、「7.ケアプラン作成の利用者負担の導入」です。こちらも介護保険部会において、次期改正での継続議論方針が示されています。先の要介護1と2の介護保険外しと比べれば、こちらは実現される可能性も十分にあり得るテーマとも言えます。厚労省は今年度より「ケアマネジメントに係る諸課題に対する検討会」を発足させました。この検討会での議論とともに、介護保険部会での次回改正における大きな論点の1つとなります。
3つ目は、「8.利用者の2割負担の対象拡大」です。財務省による具体的な改革の方向性(案)は、①2割負担の対象者の範囲拡大について早急に実現すべき。②将来的には原則を2割負担とし、3割負担の判断基準を見直すこと。と示されています。2割負担の拡大は、一旦は今回の改正で進められる方針が示されたものの、物価高騰の影響を踏まえて最終的には次期改正まで議論は見送られることになりました。次期改正における実現可能性が最も高いテーマであり、具体的な中身の詰めが大きなポイントとなります。
3年後の法改正に向けた議論が、この財務省による意見提言からスタートしたと捉えるべきであり、法改正は報酬改定に先だった議論が行われます。来年末には内容取りまとめが行われることからも、今後の議論に大いに注目したいと思います。

斉藤 正行氏
一般社団法人全国介護事業者連盟 理事長
現場主導による制度改革の実現に向けて介護及び障害福祉事業者による大同団結を目指す横断型(法人種別・サービス種別)の事業者団体